【深掘り】嘉手納F15退役後の体制は? 政府「米軍の抑止力低下」否定に躍起


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F22ステルス戦闘機=2017年10月、ソウル郊外の軍用空港

 米軍嘉手納基地に常駐するF15戦闘機の退役に向け、米空軍は第5世代戦闘機F22の米本国からの巡回配備を開始した。日本政府は「抑止力は維持、強化される」(浜田靖一防衛相)と語り、米軍の関与低下という印象を払拭することに躍起になっている。米国防総省は琉球新報の取材に、短期的には「F22がF15退役に伴って穴埋めをするのでプレゼンス(存在感)を維持する」と述べる一方、退役するF15に代わる常駐体制など「長期的な解決策はまだ決まっていない」と説明している。

 F15戦闘機の退役計画を巡っては、10月27日に英紙フィナンシャル・タイムズ電子版などがその方針を報じた。F15の配備体制を見直し、F22の半年ごとのローテーション配備に切り替えるという内容だった。

 翌28日昼の会見で、林芳正外相は「日米間の具体的な議論の詳細を答えることは差し控えたい」と述べるにとどめた。だが、その夜には防衛省がF22の巡回配備について、次の常駐戦闘機に入れ替わるまでの暫定的な対応だと回答。同時間帯に米空軍も質問に同様の内容を回答してきた。

 浜田防衛相は今月1日の会見で「恒久的な部隊に置き換える」と改めて強調した。だが、F15に代わる戦闘機の機種や機数、再配備の時期など最終的な体制は未定だ。米軍準機関紙スターズ・アンド・ストライプスは、ローテーション配備に切り替わる可能性も残されていると報じた。

 米国内では国防予算をどの戦闘機の購入に充てるかで議論が分かれている。F15の更新型であるF15EXについて、米軍は調達数を当初予定の144機から80機へ大幅に減らした。嘉手納基地に配備される後継機が、最新鋭ステルス戦闘機F35となる可能性も取り沙汰されている。

 防衛省関係者は中国を念頭に「安全保障環境が厳しさを増す今、嘉手納基地の対処力を減らすと誤ったメッセージを与える。大事なのは常駐かローテーションかではなく、国内外からの『見え方』だ」と強調する。

 多くの不明点を残したまま、4日にF22Aが4機嘉手納基地に飛来し、F15の退役作業が始まった。県幹部は「退役で基地負担の軽減につながることを期待するが、暫定的に配備されたF22は騒音も懸念される。注視したい」と述べた。

(明真南斗、梅田正覚)