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自分の命、未来のまだ見ぬ命 星明彦・沖縄総合事務局運輸部長<仕事の余白>


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 先日も、自転車練習の足で浜比嘉島に寄る。アマミチューの墓前で売店を営むおばちゃんに「世界一美味しいコーヒー」をお願いし、訪れる人ととりとめのない話をする。

 香川から来たとある女性が「ここは帰る(還る)場所。失われた命は残された人に意味を持って繋がる」と言う。過去も現在も未来も全ての命が繋がり、ここを命の源、人間で言えば母親のお腹のように感じるのは、なぜだろう。

 先日、国頭村辺戸で教えていただいた。沖縄が世界有数の健康長寿の国であったのは、温かい繋がりや感謝と尊敬の気持ち、自ら育てた薬草や野菜、豆腐等を食べ、集落の掃除をする美しい生き方があったから。

 先日島根で、たたら製鉄で跡形なく切り崩した山を、祖先が数百年後のまだ見ぬ子たちのため豊かな棚田と森として残した風景を見て涙が流れた。海外なら崩したまま放置する鉱山を、数百年前に生きた人々は何を想像し、そうすると決めたのだろうか。我々はSDGsなんて遥かに越えたものを頂いて生きてきた。大事なものは全て引き継がれ、未来の子を幸せにする力が備わっているのではないか。

 自分はよく生きているだろうか。まだ見ぬ子のため、今日、何を残しただろうか。そんなことを考えながら毎日を過ごす。まもなく3年ぶりのツールドおきなわ。命を失いかけた僕に第二の命と帰る場をくれた、そして大事なことを教えてくれた地域の方々に、未来の子に感謝の気持ちを伝えるべく、命の全てを賭けて全力で走ってみたい。