森林資金、山間部で増額へ 都市部偏重の現状受け見直し 最少は沖縄・渡名喜村の3万円


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 政府、与党は、森林整備や保全のために自治体に配る資金「森林環境譲与税」の制度を見直す方向で検討に入った。人口の多い都市部に配分額が偏っている現状に不満が出ているのを受け、2024年度にも新たな配分方法を導入し、山間部など森林が多い地域の取り分を上積みしたい意向。6日までの取材に複数の関係者が明らかにした。

 森林環境譲与税の配分方法は、私有の人工林面積や林業就業者数に加え、人口を考慮している。このため森林が乏しい都市部に取り分が偏重。21年度の総額は400億円で、配分額は横浜市の3億521万円、浜松市2億5896万円、大阪市2億3622万円などが上位となり、最少の渡名喜村は3万3千円だった。

 同譲与税の総額は段階的に引き上げており、22~23年度は年500億円、24年度にはさらに100億円増えて年600億円になる。政府、与党内にはこのタイミングに合わせ、山間部や林業振興に熱心な自治体への配分額を増やす案が浮上。都市部の配分額は大きく変動させない意向だ。

 政府関係者は「600億円に増える時に見直せば、どの自治体も減らさずに山間部などの配分を上積みできる」と説明。年末にも見直しの方向性を示した上で、23年度中に山間部などの取り分を増やすための新たな配分ルールを探る見通しだ。

 都市部の配分額を手厚くしているのは、公共施設の木造化などで木材の消費を増やし、森林の荒廃を防ぐ狙いがある。しかし有効な使い道を見いだせず基金に積むケースが多く、森林が多いのに配分額が少ない小規模自治体から制度の見直し要望が出ていた。


<用語>森林環境譲与税

 間伐や林業の担い手育成、木材利用を促すため、国が都道府県と市区町村に配っている資金。2019年度に総額200億円で始まり、段階的に拡大。24年度以降は600億円となる。総額の50%を私有の人工林面積、30%を人口、20%を林業就業者数に応じて配る。財源は当面、自治体に資金を貸し付ける「地方公共団体金融機構」の資金を活用。24年度からは森林環境税として個人住民税に1人当たり年間千円を上乗せして徴収し、譲与税の財源とする。
(共同通信)