沖縄の泡盛をタイ首相に寄贈へ 原料にタイ米、岸田首相APEC出席で現地訪問 県酒造組合が外交活用を提起


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県酒造協同組合の「紺碧 3年古酒」

 【東京】アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のため岸田文雄首相が18日からタイを訪問するのに伴い、タイのプラユット首相に泡盛を寄贈する方向で調整していることが関係者への取材で8日までに分かった。今年は沖縄の日本復帰50年とともに、日本とタイの正式な外交関係が始まってから135年でもある。泡盛の原料米にタイ米が使われていることなどから、県酒造組合(佐久本学会長)が日タイ友好の懸け橋として泡盛の活用を提起していた。

 政府関係者や県酒造組合への取材によると、寄贈を予定しているのは、泡盛メーカーが参加する県酒造協同組合の主力古酒ブランド「紺碧(こんぺき)3年古酒」の3升甕。

 県酒造組合が10月下旬に前沖縄担当相の西銘恒三郎衆院議員に「泡盛と沖縄の価値付けともなり泡盛振興に資する」として、タイ首相への泡盛の寄贈を要請した。これを受け県選出与党議員の総意として官邸側と交渉し、今月8日までに寄贈の内諾を得たという。

 県酒造組合の佐久本会長は琉球新報の取材に、今年が復帰50年の節目に当たり、日タイ修好135周年とも重なることから寄贈を企画したと明かした。佐久本氏は「もともと泡盛の原料は沖縄の在来米や粟だったが、国内の米価の高騰がきっかけで大正期以降、インディカ種のタイ米が用いられるようになってきた」と縁を強調した。

 APEC首脳会議は、米国、ロシア、中国などを含む21カ国・地域が参加する枠組みで、貿易や投資の自由化、経済協力を協議する。昨年は新型コロナ感染拡大の影響でオンライン形式だった。国際会議での泡盛寄贈を企画した背景には、出荷量減少が続く泡盛の復興につなげたい業界側の思惑もある。

 組合によると、2021年の琉球泡盛の総出荷量(アルコール度数30度換算)は前年比8.5%減の1万2648キロリットルで、過去最高を記録した04年以降、17年連続で減少が続く。これに伴い県内酒造所のタイ米購入量も減少傾向が顕著で、04年度の2万2921トンをピークに21年度は8727トンまで落ち込んだ。

 佐久本氏は寄贈の内諾に「両国ともに泡盛の認知度が上がることを期待している。タイ米を加工してこんないいお酒ができることをタイの人にも知ってほしい」と現地での認知度向上にも期待を寄せた。
 (安里洋輔、玉城江梨子)