【記者解説】沖縄地銀3行、業績好調の背景とは 見通し楽観視せず


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 県内地銀グループ3社の2023年3月期中間決算は、政府の新型コロナウイルス対策の資金繰り支援で企業の倒産件数が抑えられていることもあって与信コストが減少し、合計の純利益は2年連続で増加した。ただ、ロシアのウクライナ侵攻を受けた原材料費高騰や円安などで、県内経済の先行き不透明感は強い。通期の業績予想を上方修正したおきなわフィナンシャルグループ(OFG)を含め、今後の見通しには慎重な姿勢だ。

 琉球銀行は物価上昇が県内景気に与える影響などを踏まえて通期の業績予想を据え置いた。川上康頭取は「価格転嫁が進んでいないという厳しい声も聞く」と述べつつも、経済回復が物価高騰の悪影響を上回るとの見方を示した。

 OFGの山城正保社長も、今後の資源価格の上昇などの影響が県内事業者にも「ボディーブローのように効いてくる」と指摘。与信費用を積み増した21年9月期のような状況は想定していないものの、下期に向けリスクが増す局面も見据える。

 中小小規模事業者の取引先を多く抱える沖縄海邦銀行の不良債権比率は3社の中で唯一上昇した。新城一史頭取は、コロナの影響を脱しつつある事業者と、そうでない事業者とで「二極化の傾向がある」と説明した。

 今回の中間決算では手数料収入などを指す「役務等利益」の増加も目立った。資金需要が伸び悩む中で、貸出金利息収入以外の収益の柱の存在感が増した。今後も収益の多角化を目指す動きは続く。

 3社が主な取引先とする県内の中小企業にとっては、「ゼロゼロ融資」の返済が本格化する23年度以降こそが真の正念場と言える。

 国際情勢や県内景気に不確実性が伴う中で、収益力を強化しながら、地域経済や地場産業を支える役割が地銀には問われている。
 (當山幸都)