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物流のひらめき 村田紳・沖縄明治乳業社長<仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄県内にもあちこちにスーパーができ、コンビニエンスストアも台頭してきた1990年代、営業で店を回る私に、あるアイデアが浮かんだ。「物流を制するものは商流を制す」という内容の本からのひらめきだった。当時は一店舗の駐車場に個別のメーカーや問屋から何台も出入りし、従業員はその都度作業を中断しなければならなかった。それを非効率的に感じた私は、まとめて配送する物流会社があれば効率が上がると考えたのだった。

 企画立案すると当時の課長は面白がってくれたが、社長は「やるなら辞めてからやれ」と言い、私は辞表を書いて課長に預けた。失敗したら辞めるだけである。社は、私が茨城で研修を受けている間に箱モノ(プレハブ倉庫と車両3台)は用意してくれた。帰沖した私は、昼1時に出社して担当していた営業の業務を行い、夜に常務と一緒に運転マニュアルやメーカーとの契約書を作成した。それからセンターに入って荷受けや仕分け。それが終わると車に積んでドライバーに配送業務を指導しながら一緒に走った。早朝に社で少し仮眠し、帰宅してビールを飲み朝8時から11時まで寝て、シャワーを浴びて出勤という日々が3カ月ほど続いた。

 5年償却のつもりが2年で回収した。これが現在の沖縄明販(株)の基礎となっている。向こう見ずではあったが、私にとってあの成功が自信となり、並大抵のことでは動じなくなった。辞表を預かっていた課長は、後日、それだけ必死だから成功すると思ったと言ってくれた。