【識者談話】固定的な観念にとらわれる日本政府 米軍嘉手納基地のローテーション配備 野添文彬氏(沖縄国際大准教授)


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 F22やF35といったステルス性が高く、情報収集能力が高い第5世代戦闘機を中国に近い場所へ配置し、同盟国との訓練による相互運用性を高めるべきだという議論は米空軍から出ていた。一方で、星条旗紙の報道で元高官が話したように、中国のミサイルに対する嘉手納基地の脆弱(ぜいじゃく)性も言われている。そのため、空軍は中国のミサイルで基地が攻撃された場合に備え、部隊を分散化させるACE(迅速機敏な戦力展開)と呼ばれる訓練を推進している。

 特に嘉手納基地の空軍は、数年にわたり、基地が攻撃された時を想定し、三沢基地(青森県)や北海道の自衛隊基地など、普段使っていない施設へ降り、弾薬や燃料を補給して飛び立つ訓練をしきりに実施している。米海兵隊が進める島しょ作戦「遠征前方基地作戦(EABO)」と同じように、空軍も固定的な基地に頼らないような方向性を模索している。第5世代戦闘機の配置と、軍事的な脆弱性を踏まえ、バランスを取った上で、F22戦闘機のローテーション配備という形を取ったと考えられる。

 一度後ろに下げた部隊をいきなり出動させるなど、DFE(動的戦力運用)の考え方を踏まえた訓練も増えている。例えば、グアムにあった核兵器搭載の爆撃機をいったん米本国へ引いたが、いきなり中国の近くを飛ばすこともあった。どの地点でも中国に出撃できるというメッセージを発しているとみられる。

 日本政府は、中国に近い沖縄に兵力を集結させておくことが抑止力だという固定的な観念にとらわれていると思うが、米国や中国にとって、兵力や基地が集中している沖縄は脆弱(ぜいじゃく)とも捉えられている。だからこそ日本政府の説明にはやはり矛盾が生じてくると思う。分散化や、より柔軟な運用を目指す、米国の戦略の方向性を日本側としても認識する必要があるだろう。

(談、国際政治学)