子どもの栄養格差、給食が縮める 喜屋武ゆりか(沖縄大学健康栄養学部講師)<未来へいっぽにほ>


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喜屋武 ゆりか(沖縄大学健康栄養学部講師)

 新米栄養士の頃、生活習慣病で二次健診となった方の栄養相談を担当した。受診者は夜勤運転手が多く、日頃の食生活を尋ねると、「野菜は高くて買えない」「夜勤後は朝日を浴びるため、酒を飲まないと寝られない」「夜勤は日勤より給料が高いので続けるしかない」と話してくれた。

 食事や肥満をはじめとする健康(行動)は本人の責任と見なされがちだが、決してそうではない。所得や労働などの社会・経済状況が、食選択や健康状態を決定する。

 私は、子どもや子育て家庭への支援策の検討を目的とした「県子ども調査」に携わっている。調査の結果、貧困家庭の子どもはそうでない子どもと比べ、ソフトドリンクやカップ麺をよく飲食していることが分かった。これらの食品は糖質や脂質が多く、他の栄養素が乏しい。一方、魚、肉、野菜、果物、乳製品など、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含む食品はあまり食べていない。貧困の子どもほど、肥満や生活習慣病を予防する食品を摂取していない。

 日本の研究によって“給食は貧困による子どもの栄養格差を縮小させる”という事実が世界で初めて証明された。貧困群と非貧困群とで栄養素の摂取量に差があると指摘される中で、休日はその数が六つなのに対し、給食のある平日は二つに減少することが明らかにされた。さらに、給食が野菜、果物の摂取量の格差を縮めている。

 明治22年、山形県の学校で、弁当を持参できない貧しい子どもたちに食事を提供したことが、給食の始まりだと言われている。その本質は今も変わっていない。