防衛費増へ増税…政府有識者会議の提言に沖縄から反発の声 森永卓郎さんも指摘する景気への影響


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 防衛力強化に関する政府の有識者会議は22日、防衛費増額のために必要な財源を国民全体で負担することを柱とした提言をまとめた。政府の「軍拡路線」にお墨付きを与える内容とあって、県内からは増税反対の声や防衛力強化の動きへの懸念などが上がった。また増税なら生活への影響は避けられず、専門家からは拙速な議論を戒める声が相次いだ。

 八重山戦争マラリア遺族会の唐眞盛充会長(70)=石垣市=は、防衛費の増額について「(政府は)抑止力という言葉を使うが、中国も抑止力を理由に(軍備増強)する。防衛費の増額は緊張を高める。対話をするべきだ」と反対する。また増税の構想についても「大反対だ。仮に増税するにしても物価高騰の抑制費用や貧困対策など、充てるべきところがあるはずだ」と語った。

 「小禄九条の会」代表世話人の平良亀之助さん(86)は防衛費増額について「政府の方向性は許してはいけない。武力を先にして戦うという流れでは、77年前のような状況になりかねない」と反対した。防衛力強化の動きについて「昔のように地上戦ではなく、基地を構えている所が空から攻撃される。今の状況を許すと(結果は)火を見るより明らかだ。抑止力というが、基地があるところでは通用しない」と危機感を示した。

 読谷村在住の50代男性は「国際情勢の悪化を背景に増税に踏み切るのだろうが、一度上げたらずっと続くと思う。生活が苦しくなるような増税はごめんだ」と嘆いた。

 「外交や国際協力と合わせて、どう防衛体制をつくり上げるべきか、最も大事な議論が抜けている」。安全保障論が専門の植村秀樹流通経済大教授は、政府が、ウクライナ侵攻などで高まった不安感や危機感に乗じ防衛費増額に飛びついているとみる。

 経済アナリストで独協大教授の森永卓郎さんは、増税で生活が脅かされると危機感を強める。所得の中から税金や社会保険料をどれだけ払っているかを示す国民負担率は2021年度に48・0%に達していると指摘。「負担が限界にきていることは明らかだ。さらに増税したら5割を超えかねず、とてつもない重税国家となる。景気が一気に失速しかねない」と訴える。
 (中村優希、西銘研志郎、名嘉一心)