〈132〉子どもロコモ 楽しく体動かす習慣を


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 年齢とともに骨や関節、筋肉など「運動器」の働きがおとろえ、転倒や骨折などのリスクが高くなる状態のことをロコモティブシンドローム(ロコモ)(運動器症候群)といいます。もともとは高齢者の問題として注目されてきましたが、近年、子どもにも同じような状況が起きていると指摘されています。

 和式トイレが使えない、雑巾掛けができない、前屈で手が床につかないなどのバランス能力の低下や、柔軟性の問題を抱えた子どもたちが増えています。転んだ時に手をつけずに顔をけがしてしまう、キャッチボールでボールをキャッチできずに顔に当ててしまうなど、反射神経の問題も指摘されています。

 子どもの骨折発生率は、1970年からの40年間で2倍以上に増えています。またスマートフォンやゲーム機の使いすぎで姿勢が崩れ、首や肩、腰に負担がかかり、疲れやすい、眠れない、肩が凝る、腰が痛いなど、中高年のような症状を訴える子も珍しくありません。

 さらに新型コロナウイルス感染症による外出自粛が運動不足に拍車をかけています。スポーツ庁が公表した小中学生の2021年度の全国体力テストの結果では、小中学生男女とも前回の19年度から明らかに体力が低下していました。

 運動する割合は減少し、肥満度は増加した結果となっており、運動機会を増やすよう勧めています。子どもロコモを放置すれば、大きくなってからのけがや骨粗しょう症などの病気、ひいては要介護状態につながる可能性があります。

 子どもが健全に発育・発達していくためには積極的に体を動かすことが必要です。できるだけ幼い時期から積極的に体を動かす習慣をつけることが大切です。文部科学省は「幼児期運動指針」で、毎日合計60分以上、体を動かすことを推奨しています。世界保健機関(WHO)や、多くの国々でも、毎日合計60分以上の身体活動を推奨しています。ロコモを予防するために、子どもが楽しく体を動かす時間を確保することは、大人の大切な役割です。

(池間正英、県立宮古病院 整形外科)