「特定少年」の実名報道どうとらえるか 裁判官や弁護士ら改正少年法の影響を議論 「少年友の会」


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 家裁に協力し、事件を起こした少年の保護や更生を援助する「少年友の会」の九州ブロック連絡協議会がこのほど、那覇市の県男女共同参画センターてぃるるで開かれた。家裁関係者や弁護士によるパネルディスカッションでは、改正少年法の影響などについて議論。少年の更生の機会を確保するため、起訴された特定少年の実名報道は抑止的であるべきだとする意見が出た。

改正少年法の影響などについて議論した(右から)那覇家裁の高橋良徳裁判官、向松民子調査官、横江崇弁護士、大城純市弁護士=4日、那覇市の県男女共同参画センターてぃるる

 オンラインも含め、約100人が参加。パネルディスカッションには、那覇家裁の高橋良徳裁判官と向松民子調査官、沖縄弁護士会子どもの権利に関する特別委員会の横江崇委員長、「沖縄少年友の会」会長の大城純市弁護士が登壇した。

 高橋裁判官は、今年4月施行の改正少年法の概要を説明。民法での成人年齢引き下げに伴い、18歳と19歳が犯罪を犯した場合、「特定少年」と位置付ける特例が追加された。家裁から検察官送致(逆送)され、起訴された場合は、20歳以上と同じ刑事裁判手続きとなり、実名報道が可能となった。

 少年法は、少年院送致や保護観察といった「保護処分」を行うと規定している。更生を目的とした特別な処分だが、起訴された特定少年はその機会が失われる。高橋裁判官は「少年事件では犯罪の事実をきっかけとして『この少年がどれだけ保護を必要としているのか』という要保護性を考え、保護処分を決める」とし、犯した罪に対する責任を中心に考える成人事件との違いを説明した。

 那覇家裁で扱う事案の特徴については「全国比で初発非行の年齢が低く、最終学歴が中学卒業の少年が多い」とし、家庭の貧困などで進学がままならない状況があることを紹介した。

 少年事件では、家裁送致後、審判を開始するかどうかを決めるため、調査官が少年や保護者から家庭や学校、友人関係などについて聞き取る。特定少年に対しては、法律上は保護者への面接が定められていない。

 県出身の向松調査官は「法律上の保護者がいなくなっても、親から話を聞かない手はない。従来通り、親には協力をお願いしている」と明かした。さらに「少年調査官室も改正法にどのように対応するべきか悩みながらやっているが、丁寧に調査・分析をするという点は変わらない」と述べた。

 横江弁護士は今回の改正について「沖縄弁護士会の弁護士として反対で、改正する必要はなかった」と指摘。少年事件や凶悪犯罪が年々減少していることに触れ「法律は有効に機能していて、変える立法事実はない」と主張した。

 特定少年の実名報道の解除については「更正に大きなマイナスになる」とし、立ち直る可能性の高い少年に、更生する機会を確保する重要性を強調した。

 基調講演では琉球大学教育学研究科の上間陽子教授が県内の風俗業界で働く若者を対象とした調査などについて語った。性虐待や性暴力の被害に遭った女性の体験談を紹介。「男性優位の沖縄では、暴力の問題はどこにでもある。起こってしまった時にいかにして速く対応するのか。これは支援側の力だ」と指摘。加えて「(加害側を)止めるためにどのようなコミュニティーをつくるのか。そこが課題だ」と暴力の連鎖を止めるための環境について問題提起した。

(友寄開)