平和学習「現場訪れて」松代壕報告会 沖縄戦継承の課題指摘


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長野市の松代大本営地下壕視察の報告会に登壇した「戦争の記憶を継承するための沖縄―長野市民交流」のメンバーら=27日、糸満市の平和祈念資料館

 9月に長野市の松代大本営地下壕(松代壕)などを視察した「戦争の記憶を継承するための沖縄―長野市民交流」のメンバーらは27日、第2回報告会を糸満市の県平和祈念資料館で開いた。南風原平和ガイドの会の会員や沖縄戦研究者らが長野視察を踏まえ、学校での沖縄戦教育など沖縄戦の記憶の継承に向けた課題や、教訓の継承に第32軍司令部壕をどう活用するかなどについて報告した。

 報告会には約90人が参加した。報告に先立って基調講演した沖縄国際大学の秋山道宏准教授は、現地ガイドから沖縄戦が持久戦に持ち込まれた背景の一つに松代壕の掘削も関わっていると説明を受けたことを紹介した。その上で、教育現場で沖縄戦に至る近代沖縄史の教育が不十分な課題を取り上げ、「松代とのつながりを想像できるような近代史の学習が必要だ」と指摘した。

 南風原平和ガイドの会の大城逸子さんは学校で沖縄戦について教えられず、平和ガイドを始めた当初も「戦争という言葉、沖縄戦という言葉を知らなかった」と振り返った。一方で平和ガイドを務める中で学びを深めた体験を語り「聞いた話を私は伝えなければいけない」と決意を示した。

 県平和祈念資料館友の会の仲村真事務局長はフィールドワークの重要性について「実際に現場に訪れて見て何かを感じることが大切だ」と説いた。その上で松代壕は実戦で使用されなかった一方、32軍壕は実際に使用された壕として「価値がある」と強調した。

 南風原平和ガイドの会の大久保謙さんは戦没画学生らの作品を集めた美術館「無言館」(長野県上田市)などを訪れた感想などを交えて報告し、「自分自身の命や今後どのように生きていくか考えることが平和学習につながるのではないか」と述べた。

 沖縄国際大学で非常勤講師を務める川満彰さんは名護市史で数百人に聞き取りした経験も踏まえ、32軍壕を説明する際のコンセプトとして「基地がある所から戦争がやってくる、軍隊は住民を守らない、命どぅ宝の三つを、どうやって入れるかが非常に大切ではないか」と訴えた。 (武井悠)