南洋群島引き揚げの記憶を次世代に 戦後生まれの遺族らが「継承する会」発足 帰還者会の活動継承


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「旧南洋群島帰還者会を継承する会」の発足を呼びかけた比嘉俊雄さん=25日、那覇市内

 太平洋戦争時に戦場となった南洋群島からの県出身引き揚げ者でつくる「南洋群島帰還者会」の活動を継承しようと、戦後生まれの遺族らがこのほど、「旧南洋群島帰還者会を継承する会」を発足した。会の発足を呼びかけた比嘉俊雄さん(53)=豊見城市=は「旧南洋群島での県民の体験を誰かが語り継がなければ途切れてしまう。次世代に伝えたい」と思いを語る。

 「継承する会」は今年8月に発足した。メンバーは30~70代の9人で、南洋群島からの引き揚げ体験者の子や孫ら関係者でつくる。今後の活動として、帰還者からの聞き取りと記録、資料収集や調査を行う。定期的に勉強会を開催するほか、サイパンなど現地の人々との交流も続ける計画だという。

 呼びかけ人の比嘉さんは、曽祖父がサイパン移民1世で、1944年のサイパン島やテニアン島の戦闘で祖父や親戚が戦死した。約15年前に家族のルーツを調べようと帰還者会を訪ねたのを機に、活動に深く関わるようになった。帰還者会の理事に就任し、現地慰霊祭のサポートや会員との交流を続けた。

 活動の中で、南洋群島に寄せる帰還者の強い思いに触れてきた。当時を知る人々の高齢化を目の当たりにし「帰還者の記憶を記録に残し、次世代に伝えること」の必要性を感じたという。「彼らから聞いた話は僕の財産。何らかの形で残し、引き継いでいきたい」と語る。帰還者がつないできた現地の人々との交流も続けようと決意している。

 「夢物語かもしれないが、いつか旧南洋群島の歴史を伝える資料館を県内に建設したい。調査や勉強会を重ね、長く活動を続けていければ」と述べた。

 同会は日程の都合で今年の「南洋群島慰霊と交流の旅」には参加しないが、来年開催予定の事後報告会で、慰霊祭参加者から話を聞き、今後の活動につなげる予定だという。
 (赤嶺玲子)