【深掘り】琉球銀行と沖縄海邦銀行、本業維持へ効率化加速 事務業務の共同化 経営統合への観測は打ち消す


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 琉球銀行と沖縄海邦銀行が28日、バックオフィス業務の共同化に向けて具体的検討を始めたことを明らかにした。2021年に沖縄銀行と琉銀が包括業務連携協定を交わしたのに続く新たな組み合わせでの連携表明は、金融機関の垣根を越えて経営効率化に取り組む協業路線が県内地銀間でも広がることを印象付ける。琉銀と海銀が現金輸送などの業務共同化で一致した背景には、当初は琉銀と沖銀との間で進んでいた協議が一部で不調となったことがある。

共同会見で記者の質問に答える琉球銀行の川上康頭取(左)と沖縄海邦銀行の新城一史頭取=28日、那覇市の琉球リースビル

 長引く超低金利政策や人口減少による市場縮小で、地方銀行は収益環境の厳しさに直面する。こうした中、琉銀と沖銀は非競争分野で協力してコスト削減などを図っていこうと、昨年1月に包括業務連携協定「沖縄経済活性化パートナーシップ」を締結した。

 協定に基づき事務効率化によるコスト削減を推進する「バックオフィス部会」が設立。預金口座の名義人が死亡した際の相続手続きを共通化するなど、一定の進展を見せている。

 ただ、最も効率化が見込まれた現金輸送業務の共同化については「両行の業務プロセスが違う部分があり、統一化は難しい」(川上康琉銀頭取)として暗礁に乗り上げていた。そうした経緯を踏まえて琉銀側が今年4月ごろに、配送コスト削減について海銀側に打診していた。

 銀行間を巡回し書類を搬送する行内メール便や現金輸送などで共同化の必要性が両行で共有されたため、11月28日にそれぞれの取締役会を開いて具体的検討の開始を決議、覚書に締結した。直後の記者会見では、輸送業務を担う共同出資会社を23年度中に設立する方針も明らかにした。

 会見で海銀の新城一史頭取は「(両行それぞれの)文化や風土、スタイルがある。それをそのまま維持した方が有益と互いに認識し、共同化の検討を選択した」と協力の考え方を語り、将来的な経営統合の観測を打ち消した。事務共同化による経費削減分については「アプリの充実化など顧客サービスに使いたい」と述べ、差別化につながる新サービス開拓の原資になるとした。

 そもそも県内地銀3行は、19年から事務共同化の可能性を探ってきた経緯がある。新型コロナウイルス禍をはじめ、エネルギーや原材料高騰、円安といった厳しい経済環境が続く中、金融機関が事業者への長期的伴走支援を維持するには、経営効率化による財務基盤の強化や顧客サービスの向上は不可欠だ。

 連携して効率化を模索する沖銀との関係について琉銀の川上頭取は「パートナーシップは継続している」と指摘。スケールメリットを生かした削減効果を出すため、3行以外の金融機関にも参入を呼び掛ける姿勢を示した。
 (小波津智也)