【深掘り】新基地建設阻止への沖縄県の「切り札」に、司法の判断は 辺野古設計変更不承認訴訟


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県が国土交通相の「関与」取り消しを求める訴訟の第1回口頭弁論が開かれた福岡高裁那覇支部の法廷=1日(代表撮影)

 辺野古新基地建設計画を巡る県と国の法廷闘争は、大浦湾側の軟弱地盤の改良工事を巡る設計変更申請の不承認判断が初めて司法の場で問われることとなった。県と国の争いは「第2ステージ」(県幹部)に移ったと言える。

 「(米軍普天間飛行場の早期返還という)目的を見失っていると言わざるを得ない」

 玉城デニー知事は1日、福岡高裁那覇支部で意見陳述に立ち、工期が大幅に伸びるにも関わらず「(工事を進める)必要性に変わりはない」と主張する国を批判した。

■続く「入り口論」

 辺野古新基地建設を巡り、県と国の間では、今回を含めて計12の訴訟が提起されてきたが、主に仲井真弘多元知事による2013年の埋め立て承認に関して争われてきた。

 ただ、これまでは初期の訴訟を除けば埋め立ての可否に審理が立ち入らない「入り口論」で県の主張が退けられている。辺野古側では埋め立て工事が現在も着々と進む。

 一方、今回の裁判で問われるのは沖縄防衛局が20年に申請した設計変更に対する県の「不承認」だ。

 22年4月に国土交通相が不承認処分を取り消し、承認を求める是正指示をした後も県は承認せず、大浦湾側はいまだ土砂は投入されていない。

 県は、軟弱地盤について新基地建設を阻止する“切り札”として重視してきた。「不承認」とした県の判断の真価が問われることになる。

■くすぶる不満

 一方の政府側は、これまでの裁判で県側が勝訴した事例がないことから、今回も時間はかかっても「国側の主張が当然、認められる」(防衛省関係者)と自信を見せる。

 だが、県は今回の2件以外にも不承認とした判断自体の適法性を問う抗告訴訟も起こしており、先行きは見通せない。

 9月の県知事選で政権与党が推す候補者が勝利していれば「ここまで揉めることもなかった」と不満もくすぶる。

 裁判で争点の一つとなっている防衛局が行政不服審査法を用いて同じ国機関の判断を仰ぐ「私人なりすまし」の是非を巡っては過去にも裁判で争われ、最高裁で認められた経緯がある。

 県幹部の一人は今回の裁判の判決が抗告訴訟に影響を与える懸念もあるとして「ちゃんと中身までみて、判断してほしい」と前を見据えた。
(知念征尚、明真南斗、梅田正覚)