不登校と不安 下條満代(琉球大学教育学部教授)<未来へいっぽにほ>


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下條 満代(琉球大学教育学部教授)

 10月末、文部科学省の「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果が出た。全国的に不登校は増加し続けていて、沖縄の小学生の不登校比率は昨年度に引き続き全国で最も悪かった。不登校の要因はさまざまあるが、最も多い要因は無気力・不安(49.7%)だった。多くの子どもたちが学校生活に気力を持てず、また不安を感じていることが分かった。

 今回は不安について考えてみたい。中でもとても敏感・繊細であり、豊かな感受性を持った気質の子ども、HSC(Highly Sensitive Child)や場面緘黙(かんもく)症などの不安の強い子どもたちを考察する。HSCの子どもたちは視線、音、臭い、肌触りなどに敏感であるほか、共感性も高くストレスを感じやすいと言われている。また認知度の低い場面緘黙症の子どもたちは家庭では話せるが、学校では話すことができないため、困難も訴えられず支援につながらないことが多い。不安の強い子どもたちにとって、発表する場面の多い授業は特に不安な時間となる。不安は緊張を高め、さらに発話を困難にしてしまう。中には体が動かなくなる緘動(かんどう)という症状を伴う場合もある。このような子どもたちにとっては学校が安心・安全な場所であることは最も重要である。

 不登校の要因の約半分が「無気力・不安」だという事実から、学校は本人や保護者に登校を促すだけではなく、授業や子どもへの関わり方を含め、学校が児童生徒にとっての安心・安全な場所になっているのか、もう一度見直す必要がある。次回は無気力について考えてみたい。