コロナ後の沖縄経済 企業体質を強靭に ビジネスの人材育成が必要 中小機構理事長 豊永厚志氏<焦点インタビュー>


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豊永 厚志氏

 中小企業基盤整備機構の豊永厚志理事長がこのほど、視察を目的に来県した。豊永氏に新型コロナウイルス感染症収束後を見据えた経済回復の方策などについて聞いた。

 ―現在の経済環境は。

 「7―9月期の景況調査をみると、沖縄だけが落ちていない。これまでの感染拡大の経験が生きているのだろう。人流も戻っている。好転の兆しが見えていると思う」

 「全国的には新型コロナ禍であらゆる経済活動が止まってしまい、政府による金融支援策などでコロナ後へ向かおうとする中で、物価高や円安が起こった。この問題を乗り越えるためにはIT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)は達成すべき課題だ。これらを導入し、沖縄から大都市圏、ひいては海外に進出するような企業を沖縄から1社でも2社でも育てる支援をしたい」

 ―沖縄の注目点は。

 「伝統や自然、食がある。ブランド力ある商品を生み出し、販路を広げる取り組みが求められる。アジアのハブ・沖縄には国外からも多くの人々が訪れる。そこで彼らがいいなと思った物を海外で売ることはできないか。沖縄の企業には地の利がある。視野をもっと外に広げていい」

 「離島では往々にしてコストがかかりやすいが、コストが高くても買うというブランドをどうつくり上げていくかが問われている。長崎県五島市では、地元の和牛を使ったレトルトカレーについて、ECサイトを活用して販路を国外に広げている。いい物が売れるのではなく、売れる物がいい物だ。買ってもらえるような工夫をするべきだ」

 ―沖縄の経済回復への道筋は。

 「強靱(きょうじん)な企業体質にするべきだと思う。ITやDXを可能な限り導入し、勘ではない、経験に裏付けされたビジネスができる人材を育てることだ。リーマンショック以降中小企業の内部留保は高くなる一方で設備投資が停滞する傾向がある。ITに限らずリスクがあっても必要な投資をするという覚悟が必要となる」

 「沖縄の問題として賃金の低さがある。生産する物やサービスに対ししっかりと価格に反映できなければ、賃金は上がらない。設備投資などで自動化やアプリを導入する。そうして生産性を上げ賃金に反映することができれば、企業に人が集まり人手不足の解消にもつながるかもしれない」

 「中小機構としてコロナ後を見据え、やる気のある企業の事業再構築を伴走型で支援したい。支援に向けて地元の金融機関や支援団体、自治体と連携し取り組んでいきたい」
 (聞き手・小波津智也)