南西石油、雇用対策手つかず 従業員に不安広がる


社会
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 南西石油(西原町、リンコン・シオジロ・イシカワ社長)の来年4月以降の運営体制が不透明なことを受け、従業員が将来の雇用保障に不安感を強めている。同社は従業員の離職時期や人数が見通せないことを理由に、現状で退職金額の提示や再就職のあっせんなど具体的な雇用対策を進めていない。関係者からは再就職への対応は「最低でも(撤退の)3カ月前から動く必要がある」との指摘があるが、沖縄労働局や県は企業側からの情報提供がなく手をこまねいている状況だ。

 同社の2015年1月時点の社員数は198人。労働局による聞き取りでは、親会社でブラジル国営企業ペトロブラスがことし3月に日本撤退を発表後、10月末までの自主退職者は約15人で、その内の大半が再就職先が決まっているという。
 ただペトロ社による南西石油の譲渡先が依然決まらない中、従業員からは「来年4月以降は(仕事があるか)分からない」との声が漏れる。南西石油が9月に、取引先に対し「16年3月31日以降、石油製品販売契約を一切更新しない」と通達する際の事前報告もなかったとし「買収を含め今後の日程が分からず不安だ」と憤る。
 労働組合は社に対し、ことし3月から退職金額や再就職のあっせん、県外就職者への帰郷手当などを具体的に示すことを求めているが、現在に至るまで提示はないという。それを受け、労組側は今月19日に時間外労働をする際に労使が結ぶ「36協定」を破棄し、その後も締結を拒否している。
 ペトロ社の撤退表明直後、労働局は緊急雇用対策本部の設置を検討し、県も南西石油と労働局、西原町で構成する連絡会議を立ち上げる見通しだったが、どちらも設置に至っていない。労働局職業安定課によると、南西石油は「売却を含め親会社の撤退計画が決まらないと次の段階の離職者への対応が決まらない」との姿勢を示している。
 同課は「撤退時期を考えると、その3カ月前の年末年始ごろには(再就職に)動きださなければいけないが、企業側から離職者数などの情報がなく対策が打てない」と困惑している。
 イシカワ社長が今月22日に来県し、県担当者と面談した際も、具体的な雇用対策への言及はなかったという。県は「組合に退職条件が示されればこちらも対応できるが、今は動きようがない」とため息交じりに話す。県関係者も「県民生活に直結する問題だけに早急な対策が必要だが、現段階で県ができることがなく困っている」とつぶやいた。
 (長嶺真輝、阪口彩子、崎原有希)
英文へ→Nansei Sekiyu workers concerned over their future employment: seek assurances from company