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旧姓と戸籍上の姓の印鑑2本を使い分け…非正規職員の旧姓使用、沖縄県教委に求めた女性の思い


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「何となく旧姓を使用したい程度の人が使えるような社会になってほしい」と希望を語る専門職の女性=8日、本島

 2021年度に沖縄県教育委員会で会計年度任用職員(非正規職員)として勤務していた専門職の30代女性=本島在住=が13日までに、琉球新報の取材に応じた。女性は旧姓使用を求めており、要望を県庁の「県民ご意見箱」に投稿。県教委と県知事部局が規定を変えるきっかけとなった。女性は県庁の規定変更決定に「今の意識をくみ取って改善してくれてありがたい」と歓迎すると同時に、旧姓使用が認められないことによる不便さを切々と語った。

 女性は結婚を機に旧姓使用を考え、県教委に問い合わせたが認められなかった。「当時は詳細な説明もなく断られてモヤモヤしていた。規定制定時からジェンダー感は変化している」と振り返る。

 国家資格を有する専門職の女性。掛け持ちで複数の職場でも働いており、県教委以外では旧姓使用は認められていた。だが県教委は「本務職員(正規職員)以外は認められていない」とはねつけた。疑問は残ったが「年度更新なので次の更新に支障が出る」と思い、強く言い出せなかった。

 女性は「県民ご意見箱」に要望を投稿。だが、県教委は当初「関係部局と連携して検討したい」と回答するにとどめた。11月にこの投稿を見た本紙記者が県教委を取材したことで、規定変更につながった。

 女性は勤務時、旧姓使用を諦めたが、業務には支障が出た。旧姓と戸籍上の姓の印鑑を2本持たないといけなく「この職場はどっちの印鑑だっけ?」と迷うことも。専門職の女性は戸籍上の姓を使用すると、旧姓で培ってきたキャリアが失われる懸念もあった。

 現在は基本的には旧姓を使用し、使用不可な職場では戸籍上の姓を使用する。女性は「私みたいに強い思いがなく『何となく旧姓を使用したい』という程度の人でも使える社会になってほしい。ただ、それぞれの職場任せにすると、対応がばらばらとなり小さなストレスが積み重なる。選択的夫婦別姓制度ができるのが一番良い」と語った。

(梅田正覚)


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