数多くの沖縄関連作品が公開 名嘉山リサ<22年県内年末回顧・映画>


社会
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「一生売れない心の準備はできてるか」(當間早志監督)の一場面(提供)

 今年はコロナで延期されていた作品が公開され、復帰50年関連の特集上映が県内外で開催されるなど、数多くの沖縄関連作品が劇場に登場し、戦中・戦後・復帰から現在を問い直す機会となった。

 ロングラン上映となった「島守の塔」は、歴史の描き方をめぐって県内で激しい論争が起こった。「乙女たちの沖縄戦~白梅学徒の記録~」はドキュメンタリーと再現ドラマに分かれた異色の作品。前半だけでも十分見応えがあった。

 「東京2020オリンピック SIDE:A」では空手の喜友名諒選手が取り上げられたが、基地周辺の住民がウチナー口で話す短いシーンがある意味印象的だった。「教育と愛国」でも渡嘉敷島の「集団自決」、歴史教科書検定問題が扱われた。

 「ミラクルシティコザ」「あの夜、コザにいた。」「10ROOMS」はいずれもコザが舞台の作品。現在の物語の中に、タイムスリップ、毒ガスのポスターや1970年の新聞記事、戦果アギヤーについての会話など、何らかの形で復帰前の状況が挿入されている。映画の中のロックは物足りなかったが、本当のコザロックを扱った「紫~MURASAKI~伝説のロック・スピリッツ」も県内で公開された。

 そのほか、離島を舞台にした地域発信型の作品「バーミィトーリ」(西表ヤマネコ啓発系)、「てぃだ いつか太陽の下を歩きたい」(石垣島が舞台)、「ボーダレス アイランド」(台湾/沖縄合作映画、架空の離島が舞台)などが公開された。30年ぶりにデジタルリマスター版として再公開された「パイナップル・ツアーズ」も架空の島が舞台であった。「国境の島にいきる」映画特集で「ばちらぬん」と「ヨナグニ~旅立ちの島~」も上映され、昨日、与那国が舞台の映画「Dr.コトー診療所」も封切りされた。フィリピンとの合作映画「義足のボクサー」もあり、様々な形で「島」「国境/ボーダー」「越境」が思い起こされ、映画人がボーダーや言葉の壁をこえて活発に制作活動や上映活動をしている(できるようになった)ことが感慨深かった。

 「シネマ組踊 孝行の巻」や「うむい獅子―仲宗根正廣の獅子づくり―」も沖縄発のドキュメンタリー作品。伝統文化の啓発や継承をテーマに、小さなプロダクションが存在感を示している。デジタル化された「沖縄久高島のイザイホー」で、失われた祭祀(さいし)がクリアな映像としてよみがえった。やちむん刺激茄子の首里劇場ライブを記録した「一生売れない心の準備はできてるか」は、惜しくも今年閉館した首里劇場の貴重なドキュメントにもなった。

(沖縄映画研究会事務局長、和光大学准教授)