スーパーの鶏肉、卵への影響は?クリスマス、チキン需要増の時期に痛手…高病原性鳥インフル沖縄初確認


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飼育する鶏の殺処分など、感染拡大を防ぐ防疫措置を行う県職員=16日、金武町(県提供)

 金武町の養鶏農場での高病原性インフルエンザ疑い事例は、16日に高病原性と確認された。県内での高病原性の検出は初めてで、県は国などと連携して対策を急ぐ。被害が拡大すれば卵や鶏肉の品薄、高騰も懸念され、生産農家らも防疫の取り組みをさらに強めた。識者からは2020年にまん延した豚熱(CSF)の経験を生かすよう求める声も上がった。

 県内で初めて高病原性鳥インフルエンザが確認された。発生した養鶏場から半径10キロで鳥や卵の搬出制限がとられることもあり、県産鶏肉の品薄や卵の価格高騰が懸念されている。鶏肉や卵の需要が高まる年末年始。一部の量販店は県産の代替となる県外産や輸入品の確保を急いでいる。県産卵の輸出も停止され、関係企業は「打つ手がない」と頭を抱えた。

 発生農場から半径10キロ圏内は搬出制限区域に指定され、卵や鶏の持ち出しができなくなるが、検査で感染していないことが確認されれば国が個別に出荷を認める「制限の対象外」措置がある。今回、搬出制限区域内にある農場18戸で異常は報告されていないため、制限期間中にも順次出荷が再開される可能性がある。

 クリスマス需要

 県内スーパー最大手のサンエーは、扱う鶏肉の半分が県産となっている。搬出が制限されている地域は肉用鶏の農家が多いため「週明けから県産鶏肉の納品割合は1割程度になる」とみる。店頭で品薄にならないよう、県外産や輸入品を増やす調整をしている。

 コープおきなわは「現段階で影響はなく、数量は問題はない」としたが、今後の感染拡大に備え、緊急会議を開き対応を協議した。担当者は「鶏肉の需要が高まるクリスマスシーズン。卵は毎日食べるもの。安心して高品質なものを届けられるように全力を尽くしたい」と話した。

 イオン琉球、金秀商事は「すぐには影響はでないが、今後の感染状況を注視したい」とした。

 養鶏農家の不安

 一方、県議会経済労働委員会で、JAおきなわ農業振興本部の玉城和巳常務理事は卵の価格が高騰する可能性を指摘した。卵価格は、以前は1パック140~160円台だったのが、全国的な鳥インフルエンザの感染拡大と飼料高騰で同260~280円ほどで推移している。今回の殺処分で卵の生産量が減ることから、今後も価格が下がる見込みはないという。

 さらに、量販店の県内農家離れを懸念する。「生活に密着した料理の材料である卵は必要なので、量販店はどうしても県外のものを仕入れるようになる。県内の鶏卵生産農家の状況はさらに厳しくなる。えさの値上がりで羽数も減らしている。心配は尽きない」と不安視した。

 輸出停止

 高病原性鳥インフルエンザが確認されたことで、県産卵の輸出も停止された。シンガポールと香港で、県産卵を使った料理専門店を展開しているENグループは現地との調整に追われた。

 鳥インフルエンザが発生していない他県産の卵の輸出も検討するが、国産の卵の供給減や価格高騰から「望みは薄い」とみる。担当者は「売り上げにも大きく影響するが手の打ちようがない。これ以上広がらず終息してほしい」とため息をついた。
  (玉城江梨子)