【記者解説】初動にまた遅れ…豚熱の教訓は生かされたのか?高病原性鳥インフル沖縄初確認


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鳥インフルエンザを警戒し農場入り口に消石灰をまく養鶏業者=16日午前9時、本島北部

 沖縄県金武町の養鶏農場で、県内で初めて高病原性鳥インフルエンザウイルス感染が確認された。9日に259羽が死んだにもかかわらず、県に報告があったのは15日で、14日までに飼っているニワトリ約4万5千羽のうち7500羽以上が死んだ。被害を最小限に食い止めるためには早期発見と早期通報が大前提とされる。県内では2020年に豚熱(CSF)が発生した際も通報の遅れが明らかとなった。再発防止が求められたものの、今回も教訓を生かすことができず、初動対応の難しさが浮き彫りとなった。

 高病原性鳥インフルエンザは特定家畜伝染病に指定されており、農場で発生した場合は家畜伝染病予防法に基づき飼われている鶏などが全て殺処分される。

 農場へのウイルス感染はトリやネズミといった動物のみならず、出入りする人の衣服や靴、手指や車両など経路は幅広い。防疫するためには伝染病を「持ち込まない」「持ち出さない」「広げない」といった対策が重視されるが、発生を100%予防することは困難なため、いかにまん延を最小限でとどめられるかが非常に重要となる。

 県によると、発生農場は防疫に関する基本的な対策になる飼養衛生管理基準を満たしているという。ただ、県への報告までに全体の約17%の鶏が死んだことから、対応が遅れた面は否めない。

 これまで県内では病原性鳥インフルエンザの発生もなく、農場も判断や対応に苦慮したことが考えられるが、初動対応が遅れた分、農場からウイルスが流出するリスクも高まったとみられる。

 防疫作業は始まったばかりで予断は許されない。県や関係機関は、今回の経験や豚熱の知見を生かし、全ての農家や関係者にいかに危機管理意識を浸透させていくか、効果的な体制構築が求められる。

(小波津智也)