「県民幸福度」を指標に 経済同友会が新指標を構築、沖縄県に提唱


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「県民総幸福度指標」に関する調査報告書を照屋義実副知事(中央)に手渡す沖縄経済同友会の渕辺美紀(右)、川上康両代表幹事=19日、県庁

 沖縄経済同友会はこのほど、県民の幸福感を数値で表す「県民総幸福度(GOH)指標」に関する調査報告書をまとめた。県が策定した新・沖縄21世紀ビジョン基本計画で掲げる主要指標は客観的内容が多いとし、住民の幸福という「主観」を反映するための新たな指標の構築を提唱した。県民の幸福度を把握し主要指標と連動することで、「稼ぐ力」を伴った幸福が実感できる島の実現を県に求めている。

 世界的に幸福度の関心が高まり、個人の幸福感を数値で表す指標化の研究が国内の自治体でも盛んになっている。同友会によると、企業でも従業員の幸福度を高めることが将来的な生産性向上につながることも明らかになっているという。

 こうした動向を背景に、同友会は県民の幸福度を示す指標の構築を目指すプロジェクトチーム(PT)を7月に発足させ、調査に着手した。先進地に対するヒアリングも実施。東京都荒川区は政策分野ごとに幸福実感に結びつくと考えられる主観指標を設け、区の施策をひも付けることで住民サービスの向上を実現させていることなどを確認している。

 GOH指標を導入するための提言として、他の都道府県との比較ではない「幸福」という新たな切り口で沖縄の強みや弱みを分析し、行政が価値を押しつけずに県民がどういったことに幸福を感じるかを把握する必要性を示した。

 構築に向けたロードマップとして、同友会の報告を基に県庁でもPTを結成し、沖縄らしい幸福度因子の仮説や検証、県民との協業などを求めている。

 同友会は19日に県庁を訪ね、照屋義実副知事に報告書を手渡した。渕辺美紀代表幹事(JCC会長)は「誰もが豊かで安心して暮らせ、幸福度を感じることができる取り組みを実現させたいと思い策定した」と調査の意義を強調した。

 川上康代表幹事(琉球銀行頭取)も「目的を達成するためにも可視化は非常に重要だ。幸福度を可視化する初めての取り組みになり、ぜひその仕組みを活用してほしい」と呼び掛けた。

 照屋副知事は「時宜を得た貴重な提言だ。新たな沖縄振興計画は5年以内に見直すことになっている。研究調査を通じてみなさんのリポートを活用したい」と応じた。(小波津智也)