【沖縄】「完全にふざけてるな」-。客にそう感じさせる沖縄そば屋が沖縄市泡瀬にある。創業約20年の米八そば。2代目店主でモヒカンヘアーがトレードマークの永山賀朗さん(42)が創業者の両親から店を継いで以降、ユニークな仕掛けを次々に繰り出し、訪れた客を楽しませるために工夫を凝らしている。
最近は客が自分で会計する「セルフレジ」を導入し、その様子をネットでライブ配信。閲覧する人にボランティアの「監視役」を務めてもらおうという意味だが、肝心の閲覧者はほとんどいないという。配信されていることに戸惑いながらも、セルフレジで会計する客たち。7月の参院選で応援来県した岸田文雄首相の来店時は警備からの要請で一時配信を止めた。
メニューで目を引くのはビールジョッキに入った「ジョッキそば」。開発の理由を聞くと「皆、乾杯したいでしょ」と永山さん。注文はほとんどない。
店の駐車場には、無断駐車する人に向け「末代まで祟ります」と警告する看板。設置初日から早速、無断駐車があった。車両を見ると「Yナンバー」だったそうで、日本語が分からなかった可能性が高いと分析している。
客へのいたずらも。テーブルの上に「あけないで×」と書いた缶が。こっそり開けると「あけてしまいましたね。チップありがとうございます!」と書かれており、心付けをねだられる。
店頭には「Earth People Only(地球人のみ)」の文字があった。過去にサッカーの試合で「Japanese People Only(日本人のみ)」と人種差別を示唆する横断幕の掲示が問題となったことに触れ、人類愛を表現するためにこの文言を書いたといい、意外な正義感も見えた。
肝心なそばの味は、今も店に立つ先代の母直子さん(73)、父盛芳さん(73)から基本を受け継いだ。豚肉とかつおだしのスープに大手製麺所の麺を使っている。
20年前に店を開けた直子さんは、息子の経営に「時代が時代なので。私たちにはびっくりすることも多いが、本人もお客も楽しんでいると思う」と寛大に見守る。
なんでこんなことをしているのか? 永山さんに聞くと「仕事はやっぱり楽しくしないと心がふさがってしまう。味はもちろん大事だが、お客さんから『おいしかったよ』と言われるよりも『楽しかったよ』と言われるともっとうれしい」。意外に真面目な返事があった。
(島袋良太)