首里高校の軽音楽部がユニークな活動をしている。練習の拠点は那覇市の大名児童館。大人たちの協力を得て、館内で自分たちの音を追求する。全国で入賞を果たすなど実力は折り紙付きだ。施設利用の代わりに部員らは児童館に通う子どもたちの勉強を見てあげている。高3のメンバーは卒業に合わせ、記念ライブで感謝を伝えようと準備を始めている。
音楽好きの屋宜貢館長(49)が生徒らと防音材を張り、機材を譲り受けるなどして児童館2階にスタジオを作った。ライブハウスを経営していた山田義和さん(56)も賛同し、アドバイザーとして参加。手作りながら本格的なスタジオが完成し、練習を続けてきた。「コロナの影響で部活動が制限された時期にもスタジオを使えたのはありがたかった」と部員の玉城ひよりさん(18)は話す。
スタジオ利用の代わりに、児童館の夜間無料塾で小中学生に勉強を教える。屋宜館長は「部員がスタジオで練習を始めると、いつの間にか子どもたちが窓から見つめている」と話す。「勉強しなさいと頭ごなしに言っても響かなかった子に頑張ったら首里高の軽音楽部に入れるよと言うと一生懸命勉強に打ち込むようになった」と微笑む。
軽音部内で結成した「ヒカリバンド」は全国高校生アマチュアバンド選手権(8月、茨城県)に県代表として出場し、準グランプリを受賞した。同月にはオリジナルCDもリリース。館長や地域の人たちの協力を得ながらスポンサーを募り、制作費用を賄った。
ボーカルの内間輝さん(18)は「活動できるのは屋宜さんや児童館スタッフ、地域の皆さんのおかげ。CDリリース、ワンマンライブといろんな経験ができた」と感謝の言葉は尽きない。
卒業を機にバンドは活動休止とし、メンバーは進学、留学とそれぞれの道に進む。3年間の集大成として首里公民館での卒業記念ライブを計画している。ギターの照屋睦喜さん(18)は「3年間支えてくれた人たちに自分たちの今の姿を見てもらいたい」と力強く語った。
3年間で最も感動したことをメンバーに聞くと「児童館に通っていた中学生がヒカリバンドに憧れて首里高を受験し、1年生として入部してきたこと」と教えてくれた。
屋宜館長は「彼らの背中を見て後輩たちが活動を頑張っている。次の代、その次の代と続いていけばいいと思う」と、今後もサポートしていくことを誓った。
(普天間伊織)