prime

沖縄関係予算「予想外」の微減 岸田政権で「役所の論理」復活か<復帰51年からの針路・変質する沖縄予算>㊤


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
2023年度沖縄関係予算について説明を受けた自民党沖縄振興調査会で発言する小渕優子会長=21日、自民党本部

2023年度の予算案が閣議決定した。沖縄関係予算は3千億円を2年連続で割り込み、2679億円となった。一方、米軍、自衛隊の「南西シフト」が進む中で膨張する防衛予算では、新たな安全保障関連3文書で掲げた南西地域の防衛強化の方針を反映し、陸上自衛隊部隊の増強や沖縄での補給拠点整備に向けた費用などが盛り込まれた。沖縄の日本復帰から51年目の予算編成、その舞台裏を紐解く。

「正直、もっと下がるのかと思っていた」

2679億円。閣議決定前の12月中旬、2023年度沖縄関係予算案の総額を伝え聞いたある県幹部は思わず本音を漏らした。県内最大の政治決戦となった9月の知事選で、玉城デニー知事が再選したことで、県庁内では予算規模が「相当厳しくなる」(県幹部)との見方が支配的だったからだ。沖縄の日本復帰50年の節目を前にした22年度予算が、前年比約330億円の大幅減で、10年ぶりに3千億円台を割り込んだことも警戒感を強めていた。しかし、ふたを開けてみると、予算額は前年から5億円の微減にとどまった。

「過度の政治主導が弱まり、ようやく従来型の『役所の論理』が強まってきたのではないか」

ある県関係者は、前年度までとは打って変わった静かな展開の背景をこう読み解き、続けた。「岸田文雄首相の就任が転換点だった」

岸田首相以前の安倍・菅政権の政権運営は、「官邸主導」の色合いが濃かった。県内では、名護市辺野古の新基地建設に対する時の県政の賛否で予算を増減する「アメとムチ」政策を露骨に展開していたとの受け止めも少なくなかった。安倍晋三元首相が、「辺野古容認派」の仲井真弘多元知事と14~21年度までの「3千億円台の確保」を約束し、その後、「辺野古反対」を掲げる翁長雄志前知事に県政が移ると予算は年々削られた。

だが、昨年10月に就任した岸田首相にとって初の本格的な予算編成が始まると、変化の兆しが表れた。県は今年初めて、防災・減災対策を強化する「国土強靱化予算」の対象事業に、一括交付金のハード対象事業を充てられないか要望した。

当初は難色を示されたが、調整の結果、初めて認められ、22年度一般会計第6次補正予算で34億8500万円が計上された。

県関係者は「タイミング良く効果的な要請活動ができた。一度ハード交付金対象事業に認められると、今後も予算根拠となり交渉の武器となり得る」と声を弾ませた。

ただ、一括交付金のソフト交付金を補完する国直轄の「沖縄振興特定事業推進費」が、保守系首長でつくる「チーム沖縄」の要請などを受けて、23年度概算要求から異例の増額を果たした経緯をみると、同推進費が今後、県と国との「政争の具」になる懸念もある。

さらに、政治主導が弱まり、役所の論理が復権するという構図が、中央政界での沖縄振興への関心低下につながりかねないとの指摘もある。ある県選出の国政与党議員は、「沖縄は今年復帰50年で一時注目を浴びたが、沖縄に思いを寄せる議員は年々減っている」と嘆く。

毎年、政府がまとめる予算編成や政策の指針となる「骨太方針」。19年度までは「沖縄の振興」として項目立てられていたが、20年度以降は、地方自治体を扱う項目に付記されるのみになった。

前出の与党議員は「政府の政策課題の中で優先度は下がりつつある」と指摘する。復帰51年目の沖縄予算は、今後10年間の沖縄振興の希望と課題を浮き彫りにした。

(梅田正覚、安里洋輔)

続きを読む>>防衛費「歴史的」増額と沖縄 省庁をまたぐ防衛力強化…

<復帰51年からの針路・変質する沖縄予算>

2023年度の予算案が閣議決定した。沖縄関係予算は3千億円を2年連続で割り込み、2679億円となった。一方、米軍、自衛隊の「南西シフト」が進む中で膨張する防衛予算では、新たな安全保障関連3文書で掲げた南西地域の防衛強化の方針を反映し、陸上自衛隊部隊の増強や沖縄での補給拠点整備に向けた費用などが盛り込まれた。沖縄の日本復帰から51年目の予算編成、その舞台裏を紐解く。

㊦ 防衛費「歴史的」増額と沖縄 省庁をまたぐ防衛力強化…

「歴史的転換点だ」。2023年度当初予算案で前年度比1・2倍の6兆8219億円という大幅な増額を獲得した防衛省内は高揚感に包まれた。政府の一般歳出で防衛関係費は社会保障費に次ぐ2番手の規模に増大した。防衛関係費はこれまで、社会保障や公共事業、文教科学費を下回る4番手の状態が続いてきた。国家財政が厳しさを増す中で…続きを読む