オキハムのレトルト発売40年 「できない理由」並べた開発当初、背中押した言葉 人気ナンバーワンはあの味 沖縄


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ソーキ汁や中味汁など開発した商品を紹介する當山英夫さん=読谷村座喜味の沖縄ハム総合食品

 中味汁、ソーキ汁など琉球料理のレトルトパウチ食品は県民の日常食としてだけでなく、県外に住む家族や知人に送ったり、観光客が土産品として購入したりと多くの人が重宝している。沖縄ハム総合食品(読谷村、オキハム)が最初の商品「ソーキ汁」を発売してから40年。「汁物のレトルトパウチ商品は作れない」という当時の常識を覆した挑戦的な商品だった。いつでもどこでも気軽に食べられることで、食の伝統が受け継がれていく一助になっている。

 商品開発のきっかけは長濱徳松会長(93)の「沖縄にはおいしい琉球料理があるが、各家庭で作るのは大変だ。レトルトにできないか」という一言だった。

 カレーやコンビーフなどのレトルトパウチ商品はあったが、汁物をレトルトにするのは技術的に困難とみられていた。当時の担当者で、現在も総菜工場のアドバイザーを務める當山英夫さん(69)は長濱会長を説得するため、「できない理由」を文書にまとめて提出。すると会長は「子どもの頃に月に人が行けると思ったか。やる前にできないと言うな」と激怒した。

 「会長のあの一言がなかったら、レトルトが世に出ることはなかった」と當山さんは振り返る。包材メーカーとタッグを組み、骨付きの肉を入れても傷つかない専用の包材を作り、味や品質を落とさずに長期間常温保存できる商品へと仕上げるのに、3年以上の月日を費やした。

 その後、中味汁、てびち、いなむどぅち、山羊汁、イカ汁などを次々に発売。核家族化や料理の時間を短縮したいというニーズもあり、琉球料理シリーズはオキハムの看板商品に成長した。

 発売以来、不動の一番人気は中味汁で年間50万パック売り上げる。特に年末年始や旧盆の時期はよく売れる。マーケティング部の大城尚美さんは「中味汁は下処理が大変で昔は頻繁に食べられるものではなかった。レトルトパウチ商品の登場が中味汁をより身近なものにした」と胸を張る。

 40年以上レトルトパウチ商品に関わってきた當山さんは「琉球料理は切り方にもこだわりがある。本物の味をこれからも伝えていきたい」と誓った。 
  (玉城江梨子)