復帰50年の節目で、世界のウチナーンチュ大会も開催された2022年は、沖縄県民自らが沖縄の歴史を振り返り、社会のつながりや将来の展望について考える機会が多かった。フォーブスジャパンの「世界を変える30歳未満30人」に選出された平和教育ファシリテーターの狩俣日姫(につき)さん、お笑い芸人で復帰っ子の川田広樹さんに、この1年を振り返ってもらった。(赤嶺玲子、稲福政俊)
節目の年「沖縄」伝える 川田広樹さん 復帰っ子、お笑い芸人
子どものころから「復帰っ子」と呼ばれていた。「復帰っ子が小学校入学」とか「復帰っ子が卒業」とか、節目に出てくる言葉だったが、あまり歴史を知らず「復帰って何よ」と思っていた。
50年の節目で初めて復帰を見つめ直した。沖縄の歴史をより深く考え、沖縄戦のことが伝えたくなって、戦争体験者の話を聞いた。何で沖縄戦を伝えたくなったのかは、うまく言葉にできないけれど、心が動いたから。
祖父が沖縄戦で亡くなったのは知っていたが、改めて親戚から話を聞き、祖父が亡くなる前に家族に会いに来たことも知った。戦争は昔のことだと思っていたが「たった77年前だ」と思うようになった。
ドキュメンタリーの撮影でインタビューしたおじぃの言葉が心に刺さった。インタビューの最後に「忘れたい」って僕に訴えかけて。想像を絶する経験だったと思う。
伝えたいから始まって、ガマを題材にしたお芝居にも挑戦した。お笑いだけではない伝え方を知った。来年も沖縄のことを伝える仕事をしていきたい。
共に新しい道を開拓 狩俣日姫さん 平和教育ファシリテーター
ビジネス誌「フォーブスジャパン」の「世界を変える30歳未満」に選出され仰天した。平和学習に注目が集まっていることがうれしいし、新しい道が開けたように思う。
今年は仲間と共に「株式会社さびら」を立ち上げた。平和教育ファシリテーターとして平和学習プログラムの開発や提供をしている。社名の「さびら」は「一緒に~しましょう」という意味があり、私の目指す平和教育の形を表す言葉だ。
学生時代は平和学習が苦手で、戦争体験者の話を聞いても予備知識がないので怖い印象しか残らなかった。その経験から、戦争体験者の言葉を受け取るための土台を整える平和教育プログラムが必要だと考え、取り組んでいる。「なぜ沖縄戦を学ぶのか」「学びをどう社会に生かすことができるのか」。答えを求めるのではなく共に考えていきたい。
来年は大人向けの平和学習にも取り組みたい。私のように平和学習が苦手だった人と学び直しができれば。「一緒に勉強しましょう」と多くの人をお誘いできるような一年にしたい。