<各界の4人が振り返る2022>県系人社会に貢献を…金城ビアンカさん 「今」への説明届けたい…前田勇樹さん


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 復帰50年の節目で、世界のウチナーンチュ大会も開催された2022年は、沖縄県民自らが沖縄の歴史を振り返り、社会のつながりや将来の展望について考える機会が多かった。第7回世界若者ウチナーンチュ大会の運営に携わった金城ビアンカさん、近代史研究者の前田勇樹さんの4人に、この1年を振り返ってもらった。(赤嶺玲子、稲福政俊)


県系人社会に貢献を 金城ビアンカさん JICA日系社会研修員

 今年8月からJICAの日系社会研修員として沖縄に滞在している。研修の一環として、10月に開催された「第7回世界若者ウチナーンチュ大会」でプランニングチームのリーダーを務めた。国籍や言語が違ってもウチナーンチュの子孫であるという接点だけで世界中の若者が交流した。多くのことを学ぶ貴重な経験ができ、感謝の気持ちでいっぱいだ。

 世界のウチナーンチュ大会にも初参加した。パレードで沿道の人たちが「お帰りなさい」と声をかけてくれた。古里に帰ってきたんだと感動した。一方で私たち海外のウチナーンチュは沖縄の歴史や社会について知らないことが多いと気付かされた。

 移民1世や2世は生きることに精いっぱいで移民後の沖縄の状況について学ぶ余裕がなかったが、私たち3世は先人の努力のおかげで学ぶ機会を与えられている。学びを生かしてウチナーンチュ社会に貢献することが、1世や2世への恩返しだと思う。来年3月にブラジルに帰国するが、沖縄のことを現地でも伝えていきたい。


「今」への説明届けたい 前田勇樹さん 近代史研究者

 編者を務めた書籍『つながる沖縄近現代史』を出版したのが昨年11月。今年に入り、売り上げが伸びた。沖縄の日本復帰50年ということもあり、多くの人が沖縄の歴史に関心を持ち、手に取ってくれたのだと思う。

 ただ、復帰50年と言っても基地問題など課題が山積みで手放しに喜べるような状況ではない。なぜこんな状況になっているのか。複雑で不安定な「今」に対する説明を多くの人が求めていると感じる。近現代史を学び、今の自分の立ち位置を知りたいという人に本が届いたのではないか。

 自分にとって都合のいい歴史だけを見たり、単純化したりせず、歴史の流れ(通史)を踏まえながら今につながるようなコンテンツが求められていたんだなと思う。引き続きユーチューブなどの活動を通して、研究者による情報発信の機会を増やしていきたい。

 今年は『つながる沖縄近現代史』をきっかけに多様な人たちと出会い、考えの幅が広がった1年だった。来年は読書会など小規模イベントを開催し、「つながる」場づくりに取り組みたい。