2023年の沖縄の「景気予想」、専門家4人は全員一致で「上向き」 課題は?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2022年の沖縄経済は、新型コロナウイルス感染症によるダメージから回復の兆しを見せる一方で、ロシアのウクライナ侵攻、円安による物価高の影響が各方面に及んだ。23年の沖縄経済はどこへ向かうのか。日本銀行那覇支店の飯島浩太支店長、りゅうぎん総合研究所の武田智夫常務、おきぎん経済研究所の東川平信雄社長、海邦総研の新垣学社長の4氏に見通しを寄稿してもらった。
 

 矢印を使った5段階評価で、総合評価は4氏とも上向くとの予想で一致した。特に観光は国内客の順調な回復や、インバウンド(訪日客)増加が見込まれ、需要回復や持ち直しへの期待がある。

 消費は、物価高の影響はありつつも3氏が上向くと予想し、1氏が「横ばい」と評価した。建設については、民間投資が増加するとの見方から飯島氏と武田氏が上向くと予想した一方、資材価格高止まりなどから東川平氏と新垣氏は「横ばい」とし、判断が分かれた。

 雇用情勢は4氏とも上向くと予想。課題となる人手不足の解消や、実質賃金上昇を伴う改善が必要との見方が示された。

(當山幸都)
 

持続的成長への年に キーワード=資源高・人手不足克復 飯島浩太氏(日本銀行那覇支店支店長)

飯島浩太・日本銀行那覇支店支店長

 沖縄経済は、新型コロナウイルスの感染拡大以降、2年近く厳しい状況にあったが、昨年春頃から明確に持ち直し、ようやく明るさが戻ってきた。感染抑制と経済活動の両立が進むもとで、感染症の経済に及ぼす影響が和らいできたことが大きい。

 2023年を展望すると、感染症の影響が和らぐもとで、当地経済は回復していくと予想している。

 観光は、水際対策緩和によるインバウンド観光客の増加も見込まれるため、さらなる持ち直しが期待できる。

 個人消費は、当面、コロナ禍のもとで抑制していた需要の顕在化が続くだろう。

 建設は、観光関連を始め前向きな民間設備投資が再び勢いを増すと予想される。

 もとより課題も多い。資源高の下押し圧力を乗り越えるには、適切な価格転嫁が行われるもとで、回復する需要をしっかりと取り込んでいく必要がある。人手不足を、賃金上昇を伴う雇用の改善につなげていくためには、省人化投資や労働者のスキルアップが不可欠だ。こうした課題への取り組みを進めることで、2023年が持続的成長に向けた年となることを期待している。


緩やかな回復基調へ キーワード=経済再開の様相強まる 武田智夫氏(りゅうぎん総合研究所常務)

武田智夫・りゅうぎん総合研究所常務

 2023年の県内経済は、ワクチン接種の定着や政府の経済活動の再開への方針からウィズコロナへの様相が強まることが期待される。物価高騰などの懸念材料はあるが、政府は物価対策などにより消費者物価を1.2%低下させる政策を打ち出していることもあり、県内経済は持ち直しの動きから緩やかな回復基調へ移行することが予想される。ただ、4月に電力料金の大幅な値上げが予想されることから、4~6月期は景気回復の動きは一時的に鈍化するだろう。

 消費関連は、回復の動きが予想される。外出機会の増加から消費マインドが向上し、百貨店・スーパーでは衣料品や身の回り品などの回復が見込まれるほか、飲食店などの外食需要も回復が見込まれる。

 建設関連は、持ち直しの動きが強まることが予想される。公共工事は予算削減の影響が続くことが見込まれるが、民間工事は資材価格高騰に一服感が出ることにより、投資の増加が期待される。

 観光関連は、回復の動きが予想される。国内観光客はコロナ前の2019年水準を上回ることが期待される。外国人観光客はコロナ前水準への回復はもうしばらく時間がかかることが見込まれる。


人流戻り消費活発化 キーワード=景気回復足取り緩やか 東川平信雄氏(おきぎん経済研究所社長)

東川平信雄・おきぎん経済研究所社長

 経済情勢は緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢や資源・原材料価格高騰による物価上昇圧力などを背景に、経済の回復ペースの足取りは重い状況にある。

 県内経済は、新型コロナウイルス感染症の抑制と社会経済活動の正常化が進む中で観光関連を中心に持ち直しの動きが見られる。先行きを展望すると、景気は新型コロナの感染状況に影響を受けるが、行動制限の緩和が進めば入域観光客数の増加及び労働力や物流などの供給制限が徐々に解除され、個人消費は持ち直し景気は緩やかに回復すると予想する。

 観光関連は、観光需要喚起策や水際対策緩和でインバウンド需要回復が見込まれ経済活動の再開により緩やかな回復が予想される。

 消費関連は、感染拡大が落ち着き、行動制限の緩和で人流が戻り活発化が見込まれる。一方、実質賃金と消費の回復ペースは、鈍い動きが続くものの年内での物価上昇の収束を見込み緩やかな消費回復を予想する。

 建設関連は、資材価格の高止まりや人材確保などの先行き不透明感を背景に公共投資は底堅く推移し、民間投資は経済活動の再開により緩やかな回復を予想する。
 


観光軸に回復が進展 キーワード=人材確保へ施策必要 新垣学氏(海邦総研社長)

新垣学・海邦総研社長

 2023年の県経済は、基幹産業の観光を中心に回復の歩みを進めていくだろう。
 観光は緩やかに回復していくと予測する。国内観光客は好調だが、全国旅行支援終了後の需要動向に不安が残る。インバウンドはまず台湾、香港、韓国客の需要回復が期待される。さらに中国の「ゼロコロナ」政策転換に伴い、日本旅行再開が実現すれば需要回復が加速するだろう。
 個人消費は厳しい状況になると見込む。物価上昇が急激に進み、電気料金の大幅な引き上げが予定されることから、多くの世帯は支出を引き締める方向にシフトすると考えられる。
 建設は回復に時間を要する可能性が高い。公共は堅調な推移が見込まれ、民間も県外資本を中心に、設備投資意欲が回復しつつある。一方、資材高騰により、各社とも利益確保が難しい環境になってきている。
 雇用は有効求人倍率が1倍を超えていて、求職者にとっては好環境が続く見込みだ。一歩踏み込んで言うと「企業側の人手不足をいかに解消できるか」が主要な課題になる。専業主婦・主夫や高齢者、外国人などの労働参加を促す施策の検討も必要になるだろう。