軍隊は住民守るのか 増強する自衛隊を問い直す <記者ノート><追う南西防衛強化>


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この10年で沖縄を取り巻く安全保障環境は大きく変わった。

尖閣諸島周辺では中国公船による領海接近や侵入が相次ぐ。艦艇や航空機の宮古海峡通過も多数報告されている。これに対して「国民を守る」ためとして陸上自衛隊は与那国島、宮古島に駐屯地を設置した。3月には石垣島にも開設する。

昨年12月16日に閣議決定した安保関連3文書の改定は、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を明記するなど日本の安保政策の大転換となった。これまで防衛拠点として造られてきた駐屯地は、有事になれば攻撃拠点に変容しようとしている。

防衛力増強のために増税が行われる方針も固まり、暮らしへの影響も免れない。米軍基地の削減は足踏みしたまま自衛隊の増強が続き、沖縄の基地負担は高まっている。

知念 征尚

 先の沖縄戦で多くの犠牲者を出した経験から、戦争体験者や基地建設に反対する住民には自衛隊の配備強化に強い警戒感がある。軍事拠点があることで相手国の攻撃対象となり、軍民混在の戦場と化した島で住民は逃げ場を失う。「軍隊は住民を守らない」という言葉は軍事組織に対する不信として根強く横たわる。

 政府・防衛省からすると、自衛隊がいることが相手の進攻意欲をくじくことにつながるし、いなければ「いざという時に守る責任を果たせない」という理屈がある。中国の海洋進出の活発化で漁業関係者の危機感も高まっている。

 一方、日米同盟の下で日本を防衛する責務を負う米軍は、嘉手納基地から常駐のF15を退役させ、F22戦闘機をローテーションで配備する動きを見せる。中国のミサイル脅威下における嘉手納基地の脆弱(ぜいじゃく)性が背景にあるとも指摘される。

 米中対立が激化する中、後退する米軍に代わり自衛隊が前線に進み出て、実力を強化していく構図が浮かぶ。今を生きる私たちの選択が、将来に大きな影響を与えることは間違いない。東アジアの安全保障における日本の役割を含めて、増強が続く自衛隊の姿を問い直したい。

(知念征尚)