泡盛醸造技術開発の研究に生物工学賞 琉大・外山氏ら4人 風味に微生物活用 新たな黒麹系統も発見


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日本生物工学会の生物工学技術賞を受賞した琉球大学農学部の外山博英教授(右)とバイオジェットの塚原正俊代表=11月29日、同大

 琉球大学農学部の外山(とやま)博英教授とバイオジェットの塚原正俊代表、酒類総合研究所の山田修部門長、奈良先端科学技術大学院大学の高木博史教授の4人はこのほど、微生物機能を活用した新たな風味を持つ泡盛醸造技術の開発に関する研究で、本年度の日本生物工学会生物工学技術賞を受賞した。同賞が泡盛研究に贈られるのは初。研究成果を生かし、数多くの泡盛銘柄の商品化につなげている。

 日本生物工学会は発酵食品に関連する国内最大の学会で、生物工学技術賞は生物工学に関する工業の技術開発に顕著に貢献した会員に授与される。4人は、泡盛醸造に関与する黒麹菌、酵母、もろみ乳酸菌の研究で、泡盛の品質への影響に関する新たな科学的知見を得た。

 黒麹菌の研究では、DNA解析により、これまで分類体系が明確でなかった黒麹菌と黒カビを区別することに成功。現在泡盛の醸造で広く用いられる黒麹菌とは異なる、新たな黒麹菌系統も発見した。

 泡盛酵母に関する研究では、現在ほぼ全ての酒造所で用いられる101号酵母や自然界から採取したハイビスカス酵母を親株に、醸造に適した酵母の育種に成功した。もろみ乳酸菌の研究では、酒造所のもろみを解析。泡盛の古酒で重要な甘い香りの成分「バニリン」の生成に、もろみ乳酸菌が関与していることを見いだした。

 これらの研究で得た成果を応用し、琉球大学ブランド商品「琉球大学の泡盛」を含め、数多くの泡盛銘柄の商品化につなげたことも高い評価につながった。

 清酒や焼酎の醸造技術に関する生物工学技術賞の受賞はあったが、泡盛では今回が初となった。バイオジェットの塚原代表は「泡盛の研究もようやく追いついた。成果を出せたことが非常にうれしい」と話した。琉球大の外山教授は「今後も研究成果を応用し、個性あふれる泡盛の開発や泡盛全体の酒質バラエティー化に寄与したい」と語った。
 (吉田早希)