黄色いバスの正体は…古本屋さん 米国から取り寄せた車両で「ブックパーラー」 開店した沖縄出身女性の思い


社会
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アメリカから取り寄せた教会バスを利用した砂辺書架=2022年12月23日、北谷町砂辺(喜瀬守昭撮影)

 沖縄県北谷町砂辺区の一角に、絵本から飛び出してきたような黄色の大型バスが止まっている。正体は古書店だ。同町出身の畠中沙幸さん(38)がバスを改装し、2022年11月に「ブックパーラー 砂辺書架(しなびぬしょか)」を開店した。古い校舎をイメージした店内には、畠中さんが選んだ沖縄関係の古書や絵本が並ぶ。畠中さんは「誰か一人でも自分の居場所だと感じてもらえれば」と店に込めた思いを語る。

 高校卒業後にアメリカの大学で学び、その後は東京で会社員として働いていた畠中さんだが、出産とコロナ禍を機に21年11月に帰郷した。「沖縄と本と子ども」を掛け合わせたライフワークを思い描いていたが具体的な方法が分からず、もんもんとしていたという。

 そんな時に出合ったのが米カリフォルニアからやって来た大型バスだった。SNS(交流サイト)で売り出されているのを見て一目ぼれ。2年前までカリフォルニアで教会のバスとして使用されていたもので「子どもとの親和性もあるし、かわいいし、目立つし。移動する本屋っていい! と思って。後悔したくないと、慎重派の夫を説得しました」と笑う。

 思い切って購入し、22年の夏に畠中さんの古里である砂辺区にバスが届いた。バスを改装する際に決めていたのは「すでに世にある物を使うこと」だ。新しい物が生まれては消費され、捨てられていくことに疑問を感じていた。内装業者と相談しながら、新品を一切使わずに改装を進めた。

店主の畠中沙幸さん

 バスの座いすを一部残し、本棚は材木店の倉庫で眠っていた古材木で製作。バスの廃材や古家具、拾ってきた物も活用した。「こんな風に生きていきたいという考えを体現する第一歩になった。実現できないことや矛盾はあるけど、できる範囲で楽しんでやっている」と語る。

 店は米軍嘉手納基地に近く、軍用機の騒音が日常的に聞こえる場所をあえて選んだ。「うるさくて住みづらいという声もあるが私にとっては大切な場所。来て気付くこともあるはず。近所には米軍関係者も住んでいる。基地には反対だけど人とは仲良くしたい。垣根を越えて底辺から活動すれば何か変わるかなと思って。考えは押しつけたくないけど、店に来てくれる人が(この場所で)何か気付いてくれたら、話そうかなと思っています」。

 気軽に本に触れてほしいと、古書店ではなく「ブックパーラー」と名付けた。今後はコーヒーや焼き菓子も提供する予定だ。店の外にはウッドデッキがあり、地域と協力してイベントを開催したいと夢は膨らむ。「多文化、多世代が集う地域に根差した場所にしたい。誰か一人でも自分の居場所だと思ってもらえればうれしい」と笑顔を見せた。

 住所は北谷町砂辺44。営業は水~土曜日の午前11時から午後2時まで。営業日はインスタグラムに記載。

(赤嶺玲子)