安保大転換 琉球を再び戦場にしない 知念ウシ(むぬかちゃー)<女性たち発・うちなー語らな>


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知念ウシ(むぬかちゃー)

 お守りのサングヮーとゲーンは、結ぶ形は同じだが、素材とサイズと意味が異なる。サングヮーは、バナナやサンニンの葉で、10センチほど。食べ物を持ち運ぶ際に悪くならないように容器の上にのせる。ゲーンは、ススキなどを結び、ハンマー(ゲンノー)サイズ。魔物を跳ね返し退散させるために家や畑などに置く。

 ところで、私は昨年12月17日以来、新聞が読めなくなった。当日の本紙1面トップ「安保大転換 沖縄最前線」の見出しに衝撃と恐怖を感じたからだ。日本政府が閣議決定で「安保関連3文書」を変更し、敵基地攻撃能力を保持し、沖縄配備の日本自衛隊を大幅増強する。つまり、敵とされた国による軍事施設への攻撃/反撃を招き、沖縄が的とされる危険性が高まることを知らせる記事だ。

 それからはネットでぼーっと大和のお笑い動画ばかりを見ていた。

 ところがあるネタに、沖縄県(沖縄島)を小さな細長い道具の代用品として使うオチがあった。会場の爆笑に沖縄はやっぱり道具かと、コロニアリズムの現実に引き戻された。また、ヤシの木の生える二つの小さな島に陸地からミサイルが飛んでくるイラストが出て、笑いを取るものもあった。このイメージは「南西諸島有事」ではないか。なぜ笑えるのか。

 基地問題のない日本のお笑いに逃げて現実を忘れたかったが、そこは、近代以来変わらず琉球に基地と戦争を押しつける植民地宗主国だった。

 新聞をまた読み始めた。沖縄=戦場を所与とする人々の使う言葉があった。琉球新報には「沖縄戦新聞」や「沖縄戦後新聞」という取り組みがあるが、進行中の毎日の新聞はまさに「新沖縄戦前新聞」に見えてくる。

 日本が米軍普天間飛行場の県外移設を拒む理由が露骨にわかる。県内移設への抵抗は復帰までの時間と同じ長さになる。今後は基地への反対が起きないように、次の世代を押しつぶす意味もあるだろう。そして、そんなところに「癒やされる」と観光客が日本から来る。これが「日本復帰」50年、琉球が日本国である意味だ。

 琉球を再び戦場にしない。私たちの未来を私たち自身で決めるにはどうすればいいか。個人としては、まず、孤立、分断されないように、ウヤファーフジとつながりながら、さまざまな人と話し合いたい。日常の軍事化を受け入れないように、慣れてしまった爆音でも、意識して空を見上げ煩(うるさ)いと言おう。そして冒頭のゲーンに戻る。この決意の象徴として、毎日一つ心にゲーンを、金網にゲーンを。自分自身と誰かに伝えるために。