【識者談話】ミサイル攻撃にぜい弱な米軍基地 さらなる日本の協力の必要性強調 台湾防衛CSIS文書 野添文彬氏(沖縄国際大准教授)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
野添 文彬氏

 台湾有事となれば、米国は相当な犠牲を覚悟しなければならないことが非常に強く表れたシミュレーション結果だ。文書全体として、日本の協力なしには台湾有事を戦えないというメッセージを発している。日米首脳会談や日米安全保障協議委員会(2プラス2)以降、米国の足りない部分を日本側が補う動きが続く可能性がある。

 日本政府関係者への聞き取りによると思われるが、台湾有事で日本国内の基地が中国から攻撃を受けた場合、日本が台湾有事に参加する可能性が高いとの記述がある。

 在日米軍基地からの米軍の出撃への事前協議での対応や台湾有事に日本がどう関与するかはまだ国内で十分に議論されていない。

 老朽化に伴うF15戦闘機の退役を念頭に、嘉手納からの部隊撤退をポジティブに評価しているのもポイントだ。軍事的にぜい弱なことが共通理解になっている。

 一方、軍事施設が中国のミサイル攻撃にぜい弱だとして、民間空港などの使用を求めている。これは、有事になれば民間人が巻き込まれるリスクが高まることを意味する。安全保障関連3文書でも盛り込まれたが、国民保護や住民避難の観点から問題がある。

 軍事シミュレーションは、そこに住民が住んでいることを想定せずに行われている。民間人の犠牲をどう回避するかという議論も大事だ。

 米中双方が非常に大きな損害を被るが、米国にとっても長期的なダメージを与える可能性もあるとした。

 そもそも戦争をしないための対話、外交努力が改めて求められている。
 (国際政治学)