18歳で離れた古里思う 受賞作「チャンプルー物語」に託す心 新報短編小説賞・八重瀬さん「夢みたい」


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笑顔を見せる八重瀬けいさん=10日、那覇市泉崎の琉球新報社(小川昌宏撮影)

 「夢みたい」と、八重瀬けいさん(67)=福岡県=は第50回琉球新報短編小説賞に選ばれたことを喜ぶ。受賞作「チャンプルー物語」には、18歳で沖縄を離れた八重瀬さんの「古里を思う心」が託されている。

 沖縄で生まれ、高校卒業後に親類のつてを頼り福岡県で就職した。「何も考えず無鉄砲に飛び出した。後で友人に『いなくなった』と怒られた」と語る。両親の離婚後、きょうだい4人を育てた母に「苦労を掛けたくない」と思っての決断だった。福岡では事務職のほか、生活困窮者の相談に応じるボランティアコーディネーターも務めた。

 受賞作では、沖縄出身の主人公が「代理のお墓参り」を引き受ける。自身は年に数回、帰省するが「それでも沖縄の風習は分からない。生活が苦しかったり、事情があって沖縄に帰れない人はどうしているんだろう」と疑問に思っていた。新聞で墓参り代行の記事を読み、物語を発想した。

 作品はテーマや構成のほか、登場人物も作品に出てこない部分まで細かく造形するなど、こだわって仕上げる。

 40歳の頃から小説に本格的に取り組む。2014年に佳作に入賞した。念願の正賞を射止め「さらに腰を据えて書き続けたい」と先を見据えた。
 (宮城隆尋)