〈ひと〉琉球新報短編小説賞を受賞した八重瀬けいさん テニアンで終戦迎えた母の話もいつか


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八重瀬けいさん

 創作の拠点としているのは同人誌「九州文学」だ。小説や詩、随筆などさまざまな創作に携わる同人たちに「育ててもらった」と語る。年3回の同人誌発行に加え、コロナ禍に入る前は合評会で作品を批評し合った。近年は同人会の運営にも携わり、多忙だったため「久々に書いた」小説が受賞作となった。

 児童文学の創作を入り口に、40歳のころから本格的に小説に取り組む。「自分の作品で脚本を書き、映画にしたい」との夢を抱いて小説、脚本を学んだ。文学賞にも応募してきた。2005年には戯曲が第5回てんぷす文芸大賞(宜野座村主催)で大賞に選ばれた。

 「締め切りがあると張り合いがある。でも次からは(琉球新報短編小説賞の締め切りがある)11月は寂しくなるかもしれない。受賞するともう応募できないですよね」と笑う。

 8年前に琉球新報短編小説賞の佳作に選ばれた「聞き屋リリィ」は、福岡で朗読劇になった。それまで自身が執筆した脚本を演じてきた役者たちが受賞をわがことのように喜び、上演を実現させた。「設定を福岡に変えて脚本にした。リリィを演じた役者さんは『またいつでも声を掛けてね。リリィは私よ』と言ってくれ、とてもうれしかった」と笑顔で話す。

 仲間に支えられ、今後も創作に向き合う。「テニアンで終戦を迎えた母が亡くなった。南洋移民と母のこともいつか書けるといい」と展望した。那覇市出身、福岡市在住。67歳。