<書評>『「沖縄風水学」入門』 王国時代の風水理論と実践


社会
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『「沖縄風水学」入門』和来龍著 ボーダーインク・8800円

 本書の特徴は、沖縄の風水について、現場での経験や風水判断法を原文や原著を用い、さまざまな研究者の解釈を引用し解説している点にある。

 著者は、現役の設計コンサルタントで、関西国際空港建設にも携わっていた経歴があり、30年以上現場で風水設計を実践してきた経験の持ち主である。

 沖縄に移住した当初、沖縄の家づくりや建物の配置が本土で学んだ運勢学や家相と違うことに驚かされたという。調べていくうちに沖縄の風水を知り、さらに詳しく知りたいと琉球王国時代の風水術が記された文献や文化財調査を始めたそうだ。調査が進むにつれて、王国時代に実践された風水術が、沖縄の気候風土に合わせ本場中国にも見られないほど合理的で、現代の地理学や建築・土木・環境工学に近いものだったということがわかったという。

 沖縄の風水に魅せられた著者は、県内各地の風水調査を精力的に行い、度々久米島にも訪れている。久米島は風水を実際に体験できる島として本書の中で紹介している。

 久米島博物館で寄託を受けている文書資料には、風水に関する資料が多く見られる。「上江洲家関係資料」(個人蔵)の中に、同家の当主がつづった家の記録があり、風水に関する記事が度々登場する。その他、王国時代の政治家で風水師の蔡温が教授した植林法『山林眞秘』が写本として残っている。また同家の屋敷には、風水石が配置されるなど随所に風水の影響が見られる。

 その上江洲家と並ぶ分家筋、與世永家に残る『風水書(琉球王国時代の風水師の教科書)』(個人蔵)が本書に収録されており、難しい原書を現代文に訳し、分かりやすく図を交え解説している。県内に現存する風水書は希少であることから、本書での公開の意義は大きい。

 占いや開運など風水の枝葉の知識から、もう一歩踏み込んだ幹の部分、風水思想や原文などに触れてみたい方、風水理論と実践法について知りたい方にとって興味が尽きない一冊となるに違いない。

(宮良みゆき・久米島博物館主任学芸員)


 わらい・りゅう 本名・岡美治。1959年島根県生まれ、沖縄風水アカデミー代表、沖縄国際大南島文化研究所特別研究員。著書に「幸せを呼ぶ琉球風水」、絵本「『りゅうきゅう』のはなし」。