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新しい壁の向こうに 玉寄智恵子・琉球WILL代表社員 <仕事の余白>


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 今こうして仕事を続けている私だが、一時期諦めてしまいそうになったことがある。生まれた娘は病弱で知的にも身体的にも発達に遅れがあった。小さいころは毎月大学病院に通院し、療育センターに通い娘と向き合い生活することで精いっぱいだった。諦めるというより未来が見えず、私のキャリアなんか忘れてしまっていたのかもしれない。

 その私をグイッと仕事に誘ってくれたのが社労士の先輩だ。突然の電話だった。「国の事業で社労士を探している。一緒にやらないか」。産後2年ほど経ち、自信なんか全くない。きっと迷惑になると、即座にお断りした。すると「たまちゃんが引き受けないなら、自分もこの仕事は受けないよ」と、恐ろしいことを言ってきた。お仕事があることはありがたいことだ。その仕事を私のせいで断るというのだ。あわあわする私に「自分も一緒だから大丈夫。ということでよろしく」と流れに乗ってしまった。そこから、私のキャリアは少しずつだが再スタートしたのだ。

 「神様は乗り越えられる人にしか壁を与えない」。そんなことを聞いたことがある。壁の向こうに私が目指した「社労士の仕事をする私」がいた。母も祖母も巻き込みながら、不器用な育児と仕事の両立が始まった。理想があるから壁があるのだと思う。あの時、挑戦しなかったら、もしかすると子どものせいにしていたかもしれない。今はまた、新しい壁が現れた。でもやっぱり、壁の向こうにどうしても叶えたい未来がある。