【深掘り】「いきなりメールで…」届け出に沖縄県の担当者は困惑 米軍の下地島空港使用 県は既成事実化を懸念


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県の自粛要請などを無視し、下地島空港に着陸した米軍給油機と輸送ヘリ=2006年10月11日午前9時半ごろ、宮古島市の下地島空港

 米軍普天間飛行場所属のヘリが31日に宮古島市の下地島空港を使用すると、空港を管理する県に通告したことが明らかになった。県は同空港について民間機以外の使用を認めないとした「屋良覚書」を盾に使用の自粛を求める方針。だが、12日に行われた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)では空港・港湾の柔軟な使用で合意し、直後に使用申請が行われた。米軍が下地島を恒常的に使おうとする思惑が見え隠れする。

 「事前調整もなく、いきなりメールで空港使用が届けられた」

 13日に県下地島空港管理事務所に在沖米海兵隊から届いたメールを見た県空港課の担当者は困惑の表情を浮かべた。

必要性に疑義

 米軍は今回の使用目的を、人道支援、災害救援を目的とした「習熟飛行」と説明しているという。ただ、申請された使用時間は1時間だ。

 米軍は復帰後、これまで計62日で323回、下地島空港を使用した。だが、直近では2006年を最後に使用していない。

 06年に使用したのはフィリピンで行われた米比合同訓練に向かう途中の給油が目的だった。普天間飛行場への帰還時は、悪天候を理由に下地島は使用しておらず、地元からは再三の強行使用を疑問視する声が上がった。当時の伊志嶺亮宮古島市長は「宮古圏域の住民は下地島空港の軍事利用に反対しており、今回の使用は絶対に許せない」と話すなど、地元に強い反発を呼んだ経緯がある。

 今回の習熟飛行を目的とした使用申請について県関係者の一人は「必ずしも下地島空港を使用しなければならない理由が見いだせない。有事を念頭にした米軍基地と下地島空港間のルート確認が目的ではないか」と米軍の姿勢に警戒感を示す。

標的の空港

 22年末に日本政府が閣議決定した安全保障関連3文書は、自衛隊による民間空港や港湾など公共インフラの使用拡大方針を掲げた。有事に支障なく使えるよう、平時から訓練や輸送などで使える拠点を増やしておく狙いがある。

 今月12日に行われた2プラス2では安保関連3文書を踏まえ、自衛隊だけでなく米軍も含めた2国間協力に発展させ、演習などを通じて空港・港湾の「柔軟な使用」を進めることで一致した。

 米軍はその翌13日に早速、下地島空港の使用届を県に出した形だ。

 下地島空港を巡っては、11日に同空港を視察した自民党国防議員連盟事務局長の佐藤正久参院議員が管理権を県から国に移行すべきだと主張するなど、動きが相次ぐ。

 防衛省関係者は3千メートル級滑走路がある空港は県内に那覇と下地島にしかないとして「もちろん自衛隊も使えるといいが、具体的な計画はない」と語る。別の関係者は「3文書がまとまったばかりで、地元への説明もこれからというタイミングだ」と指摘した。今後、自衛隊などによる公共インフラ使用や機能強化に向けた調整を進めようとする矢先の米軍の使用申請。「調整が南西諸島全体で進めづらくなる」と懸念を口にした。
 (知念征尚、明真南斗)