昨年1月に沖縄市山里の沖縄署周辺に数百人の若者が詰めかけ、警察車両を破損するなどした襲撃騒動は1人が逮捕、高校生を含む10代の少年7人が書類送検された。若者の集団心理などに詳しい社会心理学の専門家は、交流サイト(SNS)の影響力の大きさを改めて指摘し「SNSが人を取り込むパワーの大きさを世に知らしめる衝撃的な事案だった」と振り返った。
襲撃騒動は、沖縄市の路上でバイクの男子高校生と沖縄署に勤務していた男性巡査が接触し、高校生が右目を失明するけがを負ったことに端を発し、同署周辺に約400人の若者が詰めかけ、庁舎の一部(被害総額計約326万円)を損壊させた。
社会心理学を研究する琉球大学人文社会学部の泊真児教授は「いわゆる群集心理が働いたと考えられる。投石や爆竹などが投げ込まれるたびに、指笛や歓声が沸き、集まった人たちの心理として、警察は事実を隠蔽(いんぺい)しようとしている『悪』だと強調され、憤怒や不満のエネルギーが高まり、集団の存在によって雰囲気があおられた結果と考えられる」と話す。
巡査と高校生の接触に関し、目撃者や現場を映した防犯カメラなどの客観的情報は乏しく、当時、警察発表やマスコミ報道より先に、SNSなどで「高校生は単独事故とされ、警察が事件を隠蔽しようとしている」との趣旨の投稿が拡散した。
泊教授はSNSを通し「地元で自分たちと同世代の若者が、警察官に殴られ重傷を負ったにもかかわらず、『単独事故』とされ十分な情報開示がない。義憤にかられた者、真偽を知りたい者、警察に不信を抱く者、やじ馬的に取りあえず来た者など、さまざまな動機や背景を持つ者が参集した」と推察する。襲撃を先導する者がいれば、より一層、攻撃的な雰囲気が醸成された可能性は高いという。
泊教授はSNSなどで被害少年を中傷するような情報が拡散したことにも注視するべきだと指摘し「SNS利用者の情報リテラシー教育の必要性だけでなく、警察の迅速、公平な情報開示と、マスコミ側の正確かつ客観的な報道が、事態を沈静化させる上で重要な役割を果たす。今後、同様の暴力的事案を生まないための教訓とすべきではないか」と警鐘を鳴らした。
(友寄開)