「パリ五輪がゴール」重量挙げの糸数、手術乗り越え準備着々 五輪2大会連続4位


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最後と位置付けているパリ五輪に向け意気込みを語る糸数陽一=13日、国頭村のオクマプライベートビーチ&リゾート

 「パリ五輪をゴールに見据えている」。10年以上、重量挙げのナショナルチームで世界と戦い続ける61キロ級の糸数陽一(豊見城高―日大出、警視庁)は、自らの競技者生活の終わりを意識しながら、決意の表情を見せる。昨年、初めて体にメスを入れるなど大きな決断をしたベテランが、最後の五輪へ着々と準備を進めている。

 2022年4月の全日本選手権では、一つ上の67キロ級でスナッチの大会新を記録し8度目の頂点に立った。練習からがむしゃらにするのではなく、頭の中のイメージを体現することを意識した。限られた練習量の中でも結果を残せたことに収穫があった。

 パリ五輪に向け、順調なスタートとみられたが、6月に東京五輪前から違和感のあった右膝が悲鳴を上げた。それまでごまかしながら練習を続けてきたが、座れなくなるほどの痛みに襲われた。「判断は早い方がいい」と手術を決意した。

 右膝の軟骨を損傷しており、手術ではそれらを除去した。現在は、軟骨がない状態でスクワットをすると膝の関節の骨が互いにぶつかり、水がすぐにたまってしまう状態だという。今回の合宿も膝の経過観察のため、一足先に沖縄を離れるなど、ケアしながら練習を行っている。

 手術前はスナッチ134キロ、ジャーク160キロほどを挙げていた。膝が完全に曲がりきらずに座りづらい現在は、「5~6割は戻ってきた」とようやく110キロ、140キロ程度挙げられるまでになった。通常通りスクワットの態勢が取れるようになれば、記録的には9割は戻せるとみている。ナショナルチームの新井健一監督は「チームで主将もしており、いろいろなところで頼りにしている。期待しかないので焦らないでほしい」と語る。

 リオでは3キロ、東京では2キロとわずかな差で五輪の表彰台に届かず、連続4位と悔しい思いをしてきた。パリに向け糸数は、「状況は厳しい。不安はある」と現状を受け止める。現在は、けがを悪化させないことを重視する。どこかを強化することよりも、頭でイメージした動きを体で再現することを大切にする。

 パリ五輪の男子出場枠は国内から3人と狭く、今年は5月のアジア大会から代表選考レースが始まる。「5月は最低限の成績を残さないといけない」と結果も追い求め、「その先もパリに向け、悔いのない期間にしていきたい」と前を見る。チームには同郷の宮本昌典、知念光亮もいる。「しっかり結果を残して3人でパリに行く」と語る。

 「自分が納得して満足できるような競技を終えるために、いろいろなことに挑戦している」。日に日に少なくなっていく競技者人生の中で、最後の五輪に向かう糸数の表情は明るい。

(屋嘉部長将)