【那覇】那覇文化芸術劇場なはーとが那覇市久茂地に開館して1年余りが過ぎた。市民が芸術に触れる機会をつくるだけでなく、作品の創造・発信、人材育成・交流など幅広い役割を担う。開館以降、県内・市内のアーティストや団体と連携し、那覇や沖縄が持つ文化の力と可能性が可視化されつつある。一方、より市民に開かれた劇場となるための課題もある。
市民会館の後継施設であるなはーとは2021年10月31日、閉校した久茂地小学校跡に開館した。自主事業は創造、鑑賞、交流など6類型に分かれ、21年度は18事業、22年度は23事業に取り組む。21年度の創造事業は狂言師の野村萬斎さんら県外の著名アーティストを招き、県内のアーティストや市民が作品づくりに参加する形が特徴的だった。
22年度は沖縄の日本復帰に関する県内劇団の作品上演、市内のジャズクラブが出張ライブをする「なはーと ジャズウィーク」など県内・市内のアーティスト・各団体との連携に注力している。なはーとの林立騎企画制作グループ長は「那覇に暮らす人々からいろいろな話を聞き、企画につなげていきたい」と話す。
21年度自主事業と貸し館を合わせた観客は約4万7千人。自主事業の観客へのアンケートによると、10代から70代までが訪れ、回答者の約9割が事業を「とても良かった」または「良かった」と評価した。さらに6割が近隣店舗を「利用した」または「利用予定」と回答した。なはーとの事業の半券を近隣店舗に持参するとサービスが受けられる取り組みも始めている。
22年4~12月の稼働率は、小スタジオは約80%と高いが、大劇場など他の施設は50%台にとどまっている。なはーと劇場管理・舞台技術グループの眞榮平大さんは「特に平日の稼働を上げる必要がある。学校行事などで活用してもらうよう情報提供をしていきたい」とする。林さんは今後の課題として「文化芸術以外の分野や地域との連携をもっと広げたい。文化芸術をいろいろな課題解決にも活用してもらえるよう働きかけたい」と話す。
開館前には障がい者団体からバリアフリー面の改善を求める要請もあった。要請を受け、館内の案内表示を見やすくし、舞台の字幕装置も導入したが、装置はまだ活用されていない。
なはーとが重視するのが劇場側と市民、文化関係者が劇場活用や文化振興などについて対話する「なはーとダイアローグ」という事業だ。22年度は4回、23年度は6回程度開催したいという。林さんは「アイデアを頂き、協働していきたい」と展望する。
(伊佐尚記)