「ひもじい、寒い、寂しい…」戦時中の疎開を追体験 児童20人が発表「平和、当たり前じゃない」 対馬丸記念会 沖縄・那覇


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学童疎開体験事業で学んだことを報告する児童ら=29日、那覇市牧志駅前ほしぞら公民館

 太平洋戦争時の学童疎開を追体験する研修事業の発表会が29日、那覇市牧志駅前ほしぞら公民館で開かれた。市内の児童20人が対馬丸事件の歴史や疎開の過酷さなどを学び、平和を守り続ける大切さを共有した。同事件の遺族らで構成する対馬丸記念会が初めて企画した。

 研修は昨年11月から始まった。渡嘉敷島の本研修では、疎開児童が味わった「やーさん、ひーさん、しからーさん(ひもじい、寒い、寂しい)」を追体験した。寒くても薄着で過ごし、粗末な雑炊を食べた。同島であった「集団自決」(強制集団死)についても学んだ。

 多くの生徒が、大根の葉を混ぜたご飯に「おいしくなかった」と報告。当たり前の生活を送れるありがたさを再確認した。最初に発表した6年の児童は平和だからこそ家族と過ごせ、おいしいご飯が食べられると強調。「平和をつくるのは私たち。平和は当たり前ではありません」と訴えた。

 父が米国人で母が那覇市出身という別の6年児童は、残虐な戦争について学び「私たち人間がしたことを決して忘れてはいけません。それを教訓として語り継ぎたい」と覚悟を語った。ある5年児童は、現在も戦争などで子どもたちの夢や希望が奪われているとして、「この恐ろしいことを断ち切る努力を一人一人がすること。これこそが、対馬丸の子どもたちから示された課題だと思う」と力を込めた。

 発表を聞いた対馬丸記念会の高良政勝代表理事(82)は「非常に良かった。今の時代に当時の大変さを追体験できたのは成果だ。今後もぜひ続けたい」と話した。
 (金良孝矢)