報告書を読む限り、児童相談所はちゃんとしたソーシャルワークができず、措置権を乱用していたに過ぎないと感じる。行政の措置は子どもの養育を守るためにあるのであって、行政の自己保身のためにあるのではない。
報告書は「福祉の中に法的見立てを組み込むケースワーク」を提言している。本来は、子どもを守るために何が必要かという視点が先にあり、その中で法的な問題があるのなら、どう乗り越えるかを考えるべきだ。しかし、今回のケースは子どもの養育のためという考えが中心にならず、行政が訴えられないためにどうするかという点に重きを置いていたのではないだろうか。
また、子どもが別の里親に預けられたことも明らかになった。子どもと里親のマッチングは慎重に行うべきで、マッチングには数カ月から1年以上かかることもある。今回のマッチングは期間が短いという印象だ。
調査委員会の調査に対し、担当部署が非協力的だったことも指摘されている。報告書に課題が指摘されているが、改善につながるかは行政の受け止め方次第だ。大人に振り回された子どもの将来に、誰が責任を持つのだろうか。行政は子どもの命、人生を左右する問題だという認識を持たなければならない。
(臨床心理学)