里親解除問題のその後 児童は別里親へ、検証資料は未提供… 沖縄県の調査委「組織防衛的」「総合的判断というマジックワード」と指摘 最終報告


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 0歳から5歳まで里親宅で育った児童を児童相談所が2022年1月に委託解除した件で、調査委員会(鈴木秀洋委員長)の最終報告が2日にあった。報告書では、児童相談所が実親と里親に対立関係を生じさせる中で、委託解除前の21年10月に別の里親への委託を打診していた事実が明らかになった。さらに、知事の命令を受けた調査委の検証作業に一部資料が提供されないなど「組織防衛的対応」があったことや、昨年6月の中間報告後に改善した形跡が見えない点の指摘も。調査委は県が改善していくなら「検証できる第三者評価を加えるべき」とも提言した。

里親委託解除事案に関する調査報告書について説明する(左から)上間陽子副委員長、鈴木秀洋委員長、泉川良範委員=2日、県庁

 現在児童は新たな里親宅で暮らしている。報道陣に提供された概要版の最終報告では、中間報告と同様に、児相が対立構造をつくった後に、弁護士が法的対応を前面に出す姿勢が見られ、福祉的ケースワークを放棄したと指摘。

 この経緯について、泉川良範委員は本事案を話し合うケース会議の記録では、弁護士が何度も指導的意見を述べる一方、医師による医療的知見が一時保護などの意思決定に用いられた形跡がみられなかったことも付け加えた。

 こうした対応に、上間陽子副委員長は「(児相の)総合的判断という言葉がマジックワード的に使われている印象を持つ」と語った。児童福祉に心を砕く職員がいる一方、本事案では「この子がどう思うかが語り続けられていないことが問題」と語った。

 鈴木委員長は、報告書は児相職員の職務批判ではないとして「子どもを中心としたケースワークの実現と多様な知見を組織として尊重し、取り入れる制度運営を望みたい」と語った。また、社会的関心が高い本事案を調査する委員の立場は「里親側でも実親側でもない」と何度も強調した。

 調査委の業務はいったん終了し、今は県の特別支援チームによるケースワークを見守る形になるが「今後本児が自らの未来を選択することができるよう強く願っている」と、児童の最善の利益を願った。
 (嘉陽拓也)