【識者談話】世界自然遺産にふさわしい運転を 天然記念物ケナガネズミの事故死最多 小高信彦・森林総研主任研究員(保全生態学)


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 ケナガネズミはかつて危機的な状況に陥っていた。いろいろな保全策が功を奏し、主な生息域を東西に横断する県道2号周辺での目撃情報が増えてきている。生息域自体も人の暮らしにより近い県道70号周辺まで広がってきている。

 ケナガネズミは秋冬に繁殖するが、餌となるイタジイの実の豊凶が繁殖数の増減につながる。2021年、22年秋はともに豊作となっており、繁殖数が増えた結果、ロードキルが増えたと考えられる。これから春にかけては秋冬に生まれた幼獣が路上に出てくるようになる。より注意が求められる。

 また、ヤンバルクイナと比べてケナガネズミは認知度が低く、ドライバーの事故防止意識が高まっていないのではないか。ケナガネズミは樹上での動きは速いが、地上では遅い。逆に言えば、意識してゆっくり運転すれば事故を避けられるということだ。

 沖縄島北部は生物多様性が認められて世界自然遺産に登録された。人と野生生物との関わり方、ロードキルに関して言えば、登録地にふさわしい運転マナーとは何かを考える時期になっているのではないか。

(保全生態学)