prime

約2割の教員が残業「過労死ライン」の実態 報告書や部活…授業外でも多い業務<先生の心が折れたとき>第2部(1)教員アンケート(上)


約2割の教員が残業「過労死ライン」の実態 報告書や部活…授業外でも多い業務<先生の心が折れたとき>第2部(1)教員アンケート(上)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 教職員の約2割が「過労死ライン」を超える残業をしている―。琉球新報が連載「先生の心が折れたとき」に合わせ、県内の教職員らを対象に働き方に関するウェブアンケートを実施したところ、そんな結果が明らかになった。長時間労働は健康障害や病休につながりかねない。深刻化する教員不足の解消に向け、長時間労働の是正は待ったなしの状況だ。

 アンケートは1月21~29日に実施し、教職員や保護者、一般の方などから1571件の回答があった。そのうち教職員が7割超の1162件で、勤務先は小学校57.1%、中学校24.3%、高校13.8%、特別支援学校5.3%。7割近くが学級担任だった。

 多くの小中学校は、午前8時15分~午後4時45分が就業時間となっている。「就業時間内に業務を終えられているか?」との設問に「はい」と答えたのは、わずか4.9%に過ぎなかった。学校現場では「残業が当たり前」との実態が浮き彫りとなった。

 「いいえ」と答えた人に1カ月の残業時間(持ち帰っての仕事を含む)を尋ねたところ、最も多かったのが「46~79時間」で35.1%、さらに「31~45時間」(27.3%)と続いた。過労死ラインとされる「80時間以上」も19.2%、209件の回答があった。

 厚生労働省は脳.心臓疾患に関し「月45時間を超えて時間外労働(残業)が長くなるほど、業務と発症の関連性が徐々に強まる」と警告する。労働基準法では時間外労働の上限を「原則として月45時間、年360時間」と定めている。

 アンケートでは半数超がこの上限を超えていた。タイムカードを押して退勤後、自宅で授業準備などを行う教員は少なくない。教員が就業時間内に対応できないほど膨大な業務に追われ、いつ体調を崩してもおかしくない状況にあることが、あらためて浮かび上がった。
 (眞崎裕史)


常態化した長時間労働、どう削減する?集まった提案

 常態化した長時間労働をどう改善すれば良いかを設問で聞くと、教職員からは人員増のほか「部活動を外部委託にしてほしい」「無駄な報告書、研修の削減を」などと切実な訴えが集まった。

 「削減してほしい業務」として「部活動対応」や「研修」「補導時の対応」など選択肢を設け、「その他」を含め15の項目から選んでもらった(複数選択可)。回答した教職員全員(1162件)がこの設問に答えた。

 多かった順に「報告書など文書の作成」(784件)、「調査・統計などへの回答」(745件)、「徴収金の徴収・管理」(726件)が並び、授業以外の事務的業務が負担になっている。新型コロナウイルス感染防止のための検温作業や、部活動対応の削減を求める回答も500件を超えた。

 自由記述欄では「教員の採用人数を増やしてほしい」など増員に関する意見が相次いだほか、学習プリントの印刷や宿題のチェック、集金などを挙げ「スクールサポーターなど負担軽減職員の配置」を要請する声も多い。

 中高の教師は部活指導も大きな負担となっている。「大会があれば休日も返上して、生徒を送迎・監督している」「勝利を求められ、朝練、昼練、土日と時間が取られている」などと実情の訴えとともに、指導の外部委託の要望も多かった。

 PTA活動に参加する保護者の減少が問題となる中、教員からも「PTAに関する時間外活動や休日参加を勘弁してほしい」「PTA関係の行事や話し合いをなくしても良いのでは」といった意見もあった。

 自由記述欄への書き込みは964件。切迫した声も多かった。「(学校が始まる)月曜日は本当に憂うつです」「『子どもたちのために』。この殺し文句ですべてをささげることを求められるのが今の現場」など、胸の内を率直に打ち明ける教員もいた。

 (眞崎裕史)

 

連載「先生の心が折れたとき」

 精神疾患による教師の病気休職者が増え続けている。文部科学省の調査によると2021年度、全国の公立小中高・特別支援学校で過去最多の5897人。沖縄も過去10年間で最多の199人、在職者数に占める割合は全国で最も高い1・29%だった。心を病んだ理由はそれぞれだが、当事者の多くは要因の一つに、就業時間内に終えられるはずがない業務量を指摘する。休職者の増加は他の教員の業務負担につながり、さらに休職者が出る連鎖が起きかねない。心が折れてしまうほど多忙な教員の1日のスケジュールを取材した。

▼午前6時半出勤、午後9時にも終わらぬ業務…帰っても授業準備 小学校教員の生活<プロローグ1>

>>ほかの記事を読む