【識者談話】性犯罪被害を軽く見る日本 警察の対応、二次被害に(矢野恵美・琉大法科大学院教授)


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矢野 恵美氏

 日本では性の問題を議論したがらず、性犯罪被害がとても軽く見られている。いまだに被害者を非難する考えすらある。悪いのは加害者の一択だ。被害に遭った時に「声を上げていいんだ」と学校で教えてほしい。社会全体で「悪いのは加害者だ」という認識を徹底しなければならない。

 警察の対応にも問題がある。2020年に警察庁は「被害者の心情に配意した適切な実況見分等の実施について」との通達を出している。被害者の精神的負担の軽減や二次的被害の防止にも配意し、実況見分の必要性の有無や再現を実施する場面などについて十分検討することとされている。

 今回は丁寧な説明なく、被害者に事件当時と同じような服を用意させた。これは二次被害につながる。いくら通達を出しても、現場が性犯罪について理解できていなければ意味がない。性犯罪の被害の深刻さについて、司法関係者には絶えることなく研修を行うことが必要だ。

 現在刑法改正の議論が進んでいる。今回の事件は有罪になったが、現行では同意がないのは明らかなのに、被害者が13歳以上の場合、裁判官の想定する暴力や抵抗が認められないと無罪になる。刑法が改正され、同意のない性行為は犯罪となることを願う。

(ジェンダー法)