日本の防衛体制強化の方針を盛り込んだ安全保障関連3文書の閣議決定を受け、琉球新報社は県内41市町村長を対象にアンケートを実施した。
自衛隊強化 住民理解不十分 約半数が賛否示さず
南西諸島への自衛隊配備強化については、「どちらとも言えない」が20人で48・8%と約半数を占めた。賛成は12人(29・3%)で、反対の9人(22・0%)を7・3ポイント上回った。
「どちらとも言えない」と回答した理由として、渡具知武豊名護市長は「必要最小限度の配備は理解する」とした上で「政府による自治体や地域住民へのさらなる説明など、十分に理解が得られるよう対応すべき」と指摘。他の首長からも、住民の理解を得ることを重視する回答があった。座喜味一幸宮古島市長は「自衛隊配備強化の必要性はある。同時に国民(住民)保護の取り組みを強化すべきだ」と答えた。
配備強化に賛成する首長からは「自衛隊配備強化をすることで、抑止力の向上につながるものと考えられる」(桑江朝千夫沖縄市長)など、抑止力としての役割に期待する声や、「台湾有事の際は住民避難が大きな課題で自衛隊の力が必要だ」(比嘉朗渡名喜村長)などの意見が出た。
反対の首長からは「(本土決戦の防波堤とされた沖縄戦の教訓から)離島防衛という美名に惑わされてはいけない」(高良修一粟国村長)、「有事が発生した時の攻撃・標的拠点化しないか、心配される」(平良武康本部町長)と、懸念の声が上がった。
(比嘉璃子)
政府対応 7割超 外交努力求める
沖縄周辺の安全保障環境の変化について、政府にどのような対応を求めるかという自由記述の質問には34市町村の首長が回答し、31人が対話や外交努力による解決を求めた。外交努力を重ねつつ有事への備えをするよう要望する声もあった。
高良修一粟国村長は「アジア諸国にとって日本の軍事大国化は脅威に感じる」と指摘した。玉城デニー知事が取り組む自治体外交を応援する考えも示した。
平良武康本部町長は「突如として安保関連3文書改定に至った背景や根拠を住民に説明してほしい」と求め、「国家、民間などあらゆるレベルでの交流・外交努力が最大課題だ」とした。
松本哲治浦添市長は政府に「米中関係の改善に向けた橋渡し役」を期待した。知念覚那覇市長は「基地強化は防衛力の備えという視点のみならず、平時の市民生活への影響は最小限であること、有事の際の住民保護が担保されることが求められる」と指摘し、「住民保護の観点を最優先すべきだ」と主張した。
中山義隆石垣市長は「万が一、有事が発生した場合、台湾難民の受け入れや先島諸島住民の避難などに対応できるよう速やかに準備してほしい」と求めた。
(伊佐尚記)